WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第174回 インテルとIBMの狙い

2003/10/20 16:04

週刊BCN 2003年10月20日vol.1011掲載

 現在IAサーバーの性能拡張は、スケールアップとスケールアウトという2つの方式に分かれている。スケールアップは従来通り、CPU、メモリ/ディスクの追加・拡張によって性能を向上させる方式である。一方スケールアウトは複数サーバー構成により処理負荷のバランスをとることで、処理能力を向上させる方式だ。

間接参入の戦略

 この代表としてはシンサーバー、ブレードサーバーがあるが、徐々にブレードサーバーの出荷が増えている。インテルはブレードサーバーで、ホワイトボックスとOEM市場の席巻を狙う。このためインテルは、ブレードサーバー「BladeCenter」を開発したIBMと技術提携を行い、インテルはブレード業界標準を狙ってブレードを構成するXeonベースボード、シャーシ、マネジメントソフト、ネットワークスイッチなど部品すべてをホワイトボックスビルダーやOEMerへ供給を開始した。

 ガートナーもブレード市場が大きくなるとの報告を発表している。ガートナーのアナリスト、ジョージ・ワイス氏は「ブレードがスケールアウトの主力サーバーになるには、IAのメインストリーム技術を豊富に取り込む必要がある。そこでインテルが、IBMアーキテクチャを基盤に自社技術を結集してブレード市場に間接参入すれば、IBM・インテル・アーキテクチャが間違いなく当市場の標準になる」と語る。

 インテルは自社ブランドでサーバーを販売する方針は採らないものの、ホワイトボックスでインテルコンポーネントを使わせることで、陰のナンバーワンシェアを狙える位置にある。またSMB(中堅・中小企業)においても、多数のサーバー群を1台に集約するサーバーコンソリデーションが、TCO(所有総コスト)を削減するソリューションとして注目されるようになった。

 コンソリデーションは大きなスケールアップ性能をもつ仮想サーバーを使うことがこれまでの潮流だった。特にIBMは、大型Linuxサーバーで、サン・マイクロシステムズのコンソリデーションに大成功している。しかし、仮想化技術を使いこなすには多くのことを修得しなければならず、SMB向けとは言い切れない。これに対し、ブレード方式は多数のサーバーがワンシャーシに収められたサーバー集合体なので、SMBも気軽に採用できる。コンソリデーションをターゲットにするには、1サーバーで2CPU程度、シャーシ全体で10-15台のサーバーが収納できる必要がある。

 インテル提供のブレードは、1サーバーで2CPU、1シャーシで14サーバーという最大構成が可能で、SMBのウェブフロントエッジやコンソリデーションには十分な拡張性を備える。自社ブランドでは販売しないインテルと、自らはホワイトボックス市場に参入する意図をもたないIBM両社の狙いが合致するのが、インテルのホワイトボックスコンポーネント市場への参入戦略といえる。IBMも「この方法で自社Blade Centerのアーキテクチャを普及させられる」と語る。(中野英嗣●文)

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