WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第176回 Linux採用効果の検証

2003/11/03 16:04

週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載

 Linuxは多くの米エンタープライズの基幹システムで、1つの主力プラットフォームの地位を確立した。Linuxが特別ではなく、極めて一般的なOSとして普及し始めている米国で、ユーザー、アナリスト、ベンダーが、一斉に新めてLinuxのコスト効果に関する分析や検証を開始した。その狙いは、「Linux採用でコスト的メリットの高い分野と、大きなメリットを期待できない分野を区別したい」ことにある。確かにLinuxはUNIXやウィンドウズというエスタブリッシュOSのフリーのオルタナティブであるという考え方が一般に定着した。

他のOSより本当に安いのか

 この認識が正しいかどうかの裏付けを確認したいユーザーやベンダーが多くなったことで、Linuxコスト分析が注目されるようになった。この検証は「OSやハードの購入、マイグレーション、オペレーション、サポートなどのコストを算入してもLinuxは他のどのOSと比べても安いというのは本当だろうか」というどこでも聞かれる質問への正当な解答を入手することを目的としていると、フォレスター・リサーチのアナリスト、テッド・シャドラ氏は解説する。

 さらに同氏は、「Linuxはエンタープライズ用途だけでなく今後利用分野は大きく広がる。本格的にERP(基幹業務システム)やCRM(顧客情報管理)、SCM(サプライチェーンマネジメント)などウェブアプリケーションを導入し始めたSMB(中堅・小企業)へLinuxベースで販売したいSP(ソリューションプロバイダ)が多くなったことも、そのコスト検証が求められる大きな要因だ」と補足する。しかし、OSのコスト検証は、費用の発生する分野を網羅すると、極めて困難であることは誰もが認める。もちろん、多くの米エンタープライズもLinux採用にあたって「LinuxのTCO(所有総コスト)分析」に挑戦したものの、その複雑さや未知数が多過ぎてギブアップしたことを率直に認める。

 シカゴの大手農産物取引業のCIO、アド・エドリー氏は語る。「LinuxのTCOの要素分解は本当に難しい。ユーザーITの現状によってもコストの発生する箇所が異なり、TCO自体が流動的で適正な分析が不可能であることがわかった。これはLinuxだけでなくウィンドウズなどでも同じだ。従ってわが社はマイグレーション部分だけの分析でLinuxが安いことが判っただけで、Linux採用へ踏み切った」

 フォレスターのシャドラ氏は、「Linuxへ移行するコストや、もたらされるメリットはどの企業でも同じと考えてはならない」と次のように語る。「UNIX-to-Linuxマイグレーションはリトレーニングコストもほとんどかからず、ハードがインテルベースでぐっと安くなり、コスト効果は大きい。しかしウィンドウズからのマイグレーションの場合はリトレーニングやコンバーションコストも高くなり、これに見合うハードなどコスト削減要因が見付けにくいので、現行IT資産を十分検討する必要がある。Linuxがもたらすコスト効果はユーザーの状況により異なることに留意すべきだ」(中野英嗣●文)

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