WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第177回 人をシステム管理から解放

2003/11/10 16:04

週刊BCN 2003年11月10日vol.1014掲載

 市場や需要変動に敏捷に対応してビジネスプロセスを変化させるのが、IBM提唱の「オンデマンド経営」だ。このオンデマンド経営を支えるオンデマンドコンピューティングの特長をIBMは、(1)統合化、(2)仮想化、(3)オープン、(4)自律型の機能──と説明する。そしてこの自律機能(オートノミック)は複雑化したITシステムの自己管理機能強化によって、システム管理をできるだけ人手から解放するという目的をもつ。

これからのITに欠かせない

 富士通、NECを含め米有力ベンダーもこの自律型コンピュータを発表している。従ってこの機能は、これからのITには欠かせない重要な役割を担う。IBM発表の自律型では、自己構成、自己修復、自己最適化、自己防御という人間の自律神経の働きに似た機能が備えられる。変化に迅速に対応するオンデマンドコンピューティングでは、ダイナミックに変化する環境に適応する自己構成と、IT資源を処理負荷に応じて再配分する自己最適化が特に重要となる。

 当然IBMは自社の「eビジネスオンデマンド戦略」を具現化するため、この自律型機能強化を継続的に推進している。IBMの自律型機能担当のアラン・ガーネック副社長は10月中旬、IBMがこの機能を一層強化するため「コンティニュアス・コントロール・ループ(CCL、連続制御連鎖)」と呼ぶ新機能を開発したと発表した。ガーネック副社長は、「CCLによって、IBMシステムの自己修復、自己最適化機能が現実に役立つまでに進化した。CCLによってユーザーは保有IT資産すべてにまたがってTCO(所有総コスト)を大幅に下げられるようになった」と説明し、その制御連鎖についても次のように解説した。

 「CCLは自律機能を支えるすべてのコンポーネント仕様を詳細に記述し、このための管理構造を決定するのに役立つ。さらにコンポーネントの動作状況を継続的に監視し、何が起きているかを常に解析し、必要があればコンポーネント配置を即座に変更し正常動作の継続的実行を保証する。このセンサー機能でIT処理性能の一様性が確保されることになる」IBMは自律型機能がユーザーシステムで役立つことを実証するため、多くの有力システムパートナーと協業して、ユーザーシステムに組み込み始めた。そのパートナーの1社、カナダのオパリスは、自律型機能を活用した「統合サーバーロボット」を開発した。

 同社のヨール・ウェンディCTOは、「わが社の狙いはユーザーデータセンターの多数のサーバーを統合して運用コストを削減し、可用性を高め、さらにネットワークとアプリケーション双方のパフォーマンスを著しく高めることだ」と語り、次のように続ける。「われわれの顧客には多数のインテルサーバーがある。従ってわが社のサーバーロボットが、安いインテル上で動くことをまず狙っている。システム管理の人手を減らしたいのは、ITスタッフが十分でない中小企業だ。インテル上でもわが社ロボットは2003年中に動くようになる」(中野英嗣●文)

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