WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第199回 IBM、数百社と販売契約締結

2004/04/19 16:04

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 IBMは、ヒューレット・パッカード(HP)がコンパックコンピュータ買収にともなう多くの混乱を収拾している間、HPのエンタープライズ対象の大規模パートナーを自社陣営に引き入れる工作を活発化していた。IBMは同時に、業績が低迷し続けているサン・マイクロシステムズの多数のチャネルパートナーも陣営に加えることに成功している。IBMのサム・パルミザーノCEOも、自社の競合ベンダーパートナーのリクルートに関しては率直に認めて次のように説明した。

競合パートナーのリクルートに成功

 「IBMはここ数年、IBM製品販売の経験がないHPエンタープライズVAR(付加価値販売業者)数百社と、IBM製品の販売契約を結んだ。これはIBMの歴史でも初めての出来事だ。多くのVARがIBM陣営に加わったことで、市場でIBMプレゼンスは強化された」IDCやガートナー調査によっても、2003年世界サーバー市場でIBMはHPやサンを引き離しトップを維持し、シェアも5%上昇している。IBMグローバルビジネスパートナーのマイク・ボーマンGM(ゼネラルマネジャー)も次のように語る。

 「過去18か月でIBMは世界で400社のHPとサンのVARのリクルートに成功した。これの成果は直ちに現れ、03年にIBMが世界市場で2ケタの売上伸長を実現できたのも、これら新しくIBM陣営に加わったパートナーの貢献が大きかったからだ。IBMの世界市場における、パートナー販売は02年には250億ドル(2兆8000億円)であったが、03年には16%伸びて290億ドル(3兆2000億円)となった」

 03年IBM売上高は前年の812億ドルから10%増加して891億ドルとなった。この増加額80億ドルの半分がチャネルパートナーの貢献によるものだ。これで03年IBM売上高に占めるチャネル構成比は前年の31%から2ポイント伸び、33%となった。IBMはこれまで競合ベンダーチャネルのリクルートでは、エンタープライズ対象の大規模VARに焦点を当ててきた。しかし、余り多くの大規模VARをIBMパートナーに加えると、IBMチャネル間の競合も激しくなって、チャネル政策そのものがリスクをはらむようになる。

 パルミザーノCEOも、「大規模VARのリクルートはとくに米国では、そろそろブレーキをかけなくてはいけない」と次のように話す。「米国におけるエンタープライズVARの数はこれ以上増やしたくない。それよりも、IBMパートナー各社がプロフィッタブルになって、次の需要変化に向う投資を活性化できる環境を整えるのが、IBMの役割となる」IBMのボーマンGMも、IBMチャネル増加戦略の転換について次のように語る。「IBMが今後力点を置くチャネル戦略は、全世界地域別にSMB(中堅・中小企業)対象のパートナー不足を補うこと、および北米市場においては600社の大規模パートナーをIBMの全ての製品、サービスを十分にこなせる力量を付けさせることだ。IBMが大規模パートナーに望むのは、全領域にわたってIBM製品に精通してもらうことだ」(中野英嗣●文)

  • 1