情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第34回 鹿児島県 急ピッチで進む電子自治体化

2005/01/10 20:43

週刊BCN 2005年01月10日vol.1071掲載

 鹿児島県では、県内83市町村の電子自治体化を急ピッチで推進している。各市町村に電子申請システムの共同利用を積極的に働きかけると同時に、県内のブロードバンドネットワークの普及促進に努めている。(安藤章司)

電子申請システム共同利用基盤整う 県内ブロードバンド普及促進に努力

■昨年10月、「鹿児島e申請」スタート

 鹿児島県は、昨年10月1日付で電子申請受付システムを立ち上げた。このシステムは県内市町村との共同利用を前提としており、「鹿児島e(イー)申請」と名付けた。11月1日には、県内最大の人口を持つ鹿児島市が「鹿児島e申請」に参加した。

 鹿児島市は11月1日付で桜島町など周辺5町と合併したタイミングで電子申請の受け付けを開始した。その一方で、県内のその他の市町村では、「鹿児島e申請」を使った電子申請の受け付けはまだ始めていないものの、「市町村合併の動きが一段落した後、順次〝鹿児島e申請〟への参加が見込まれる」(鹿児島県町村会の中島喜久生・情報開発課課長補佐)と、鹿児島市に続き、来年度以降、電子申請の受け付けを始める市町村が増えるだろうと話す。

 鹿児島県は、市町村合併が盛んな地域である。昨年8月末時点では96市町村あったが、新生・鹿児島市の誕生など、合併により04年12月末時点では83市町村に減った。来年度に向けて合併に踏み切る自治体はさらに増えることが予想されている。「県内の市町村数は現在83。それが来年度以降は70を下回ることも想定される」(県庁関係者)と、合併特例法の期限切れを目前に市町村合併が急速に進んでいる。

 「鹿児島e申請」では、まず玄関口となるポータル画面を立ち上げ、そこから鹿児島県や鹿児島市など、申請の提出先を選ぶ仕組みになっている。今後、参加する市町村が増えても、このポータル画面で提出先の自治体を選ぶことで対応していく計画だ。

 鹿児島県の電子申請対応済みの手続きは、昨年10月1日時点で46種類。まずは、届出や報告など、県庁が受け付ければ完了するような簡便な手続きから電子申請化に着手した。来年度末までには、電子申請化する手続きの種類を100種類に増やすことにしており、ソフトウェアの開発を急いでいる。すでに電子申請化している手続きのなかで利用頻度が高いものは、工事関係で道路を占有するときに必要な届出などという。

 だが、今回対応した電子申請の選定にあたっては、「全手続きのうち、必ずしも申請件数が多い順とはならなかった」(西内昭一・鹿児島県企画部情報政策課主幹兼システム開発係長)と話す。その理由は、手数料が発生したり、添付書類が必要な申請では、現時点では電子支払いに対応できなかったり、費用対効果の面で電子申請化するメリットが低いと判断したからだ。

 手数料が発生する申請では、インターネット上で料金を支払うマルチペイメントの整備が不可欠であり、こうした環境が整ってから順次、電子申請化を進める考えを示す。鹿児島県への申請書類のうち、ある程度利用件数が多く、電子申請化してメリットが大きいと認められる手続きは約450種類ほど。それらについては今後、「マルチペイメントなどの環境整備や、県の財政状況などを見ながら」(今村和憲・鹿児島県企画部情報政策課主幹兼電子県庁推進係長)順次対応していく方針だ。

■今年度末には全市町村の約8割をカバー

 電子申請など電子自治体化を進める一方、県民のインターネットへの接続環境の整備にも力を入れている。03年8月末時点で、ADSLやケーブルインターネット、光ファイバーなどブロードバンド回線によるインターネットへの接続環境が整備してある市町村は県内96市町村(当時)のうち約36%となる35市町しかなかった。

 これに対して1年後の04年8月末には、NTTグループやヤフーBBなど通信事業者の協力を得ながらブロードバンド対応を進め、全市町村(当時)のうち約70%に当たる67市町でブロードバンドが使える環境を整備した。今年度(05年3月期)末までには、「全市町村の約8割でブロードバンドが使えるよう整備する」(竹之内修二・鹿児島県企画部情報政策課主幹兼管理調整係長)と県内のインフラ整備を急いでいく。

 鹿児島県は、人が住んでいる離島が27もある。今後は、これら離島にブロードバンド環境を整備していくことが大きな課題。県では、8つの離島を含む県所轄の拠点約400か所を結ぶ広域ネットワーク(WAN)「鹿児島県行政情報ネットワーク」を昨年4月に立ち上げた。このネットワークは、県庁内や県の出先機関、県立高校、保健所、農林業試験場などの事務所などを結んでいる。

 この広域ネットワークは、インターネット接続プロバイダや企業など民間へは開放していないものの、「県のネットワーク投資により、新たに光ファイバーを敷設したところも少なくない」(竹之内主幹)と、これまで光ファイバーが通っていなかった地域に光ファイバーが敷設されるなどインフラ整備に一定の効果が出ていると話す。県では、この広域ネットワークを維持する費用として、光ファイバーの賃借料などの関係費用を含めて年間3億円規模の予算を組んでいる。

 鹿児島県は、県庁や県内市町村の電子申請による受付業務の拡大を推進すると同時に、県内のブロードバンド環境を整備することで、電子自治体の体制強化を急ピッチで進めている。市町村合併が一段落する来年度以降、これらインフラを活用した電子自治体化が一気に進むものと見られる。

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