e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>59.自動車保有手続きOSS(中)

2005/11/07 16:18

週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載

 ─今月6日に閉幕した第39回東京モーターショー2005の会場内では、人気プロサッカー選手、宮本恒靖選手を起用した自動車保有関係手続きワンストップサービス(OSS)のPRチラシが来場者に配られた。12月26日のサービス開始に向けて準備も大詰めを迎えている。オンライン申請を一括で受け付けるOSSシステムは、警察署─運輸支局─県税務事務所の異なる役所間を結ぶだけでなく、新たに設置する「民間情報処理機関」を経由して民間側ともデータ連携するのが特徴だ。OSSをきっかけに自動車業界、損害保険業界でも、事務処理の効率化に向けて動き出した。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 「自動車損害賠償責任保険(以下、自賠責保険)は、これまでIT化が遅れていた分野だった。OSSが自賠責のシステム共同化を後押ししたのは間違いない」(尾形浩志・あいおい損害保険システム統括部担当課長)。民間側で、OSS対応に真っ先に取り組んだのが、自動車登録申請書類に添付する「自賠責証明書」を発行してきた損保業界だ。2003年に損保会社6社が集まって、自賠責保険共同システム「e-JIBAI(イージバイ)」の検討をスタートし、その後5社が加わり04年10月から11社でシステム稼動を開始した。今年12月には新たに2社が加わって13社体制となる。

 自賠責保険は公共性が高く、事務手続きなども法律で決められた非競争分野の商品だけに、顧客への自賠責証明書の発行処理を除けばIT化投資のインセンティブが働きにくかった。しかし、OSSが導入されれば「民間情報処理機関」に自賠責証明データの提供が必要になる。損保各社が個別にシステム対応するよりも共同でシステムを構築して、契約から自賠責証明書の発行、保険料精算の集計・決済、契約内容のデータ送信まで自賠責保険の事務処理全体で、遅れていたIT化を一気に進めることになった。決済機能には、ペイジー決済サービスを利用、自賠責証明書の用紙も各社共通で標準化、e-JIBAIを利用すれば乗合代理店が1台の端末で複数の損保会社の事務処理を行うことも可能だ。

 自賠責保険の契約件数は年間約2000万件。今年7月末までの9か月間の利用状況は登録代理店数約8万店、契約件数約252万件と、契約全体の15%程度の利用にとどまったが、現在OSS対応のシステム導入に追われる自動車ディーラー系代理店が参加するのはこれから。OSS導入で東京、神奈川、愛知、大阪の4都府県からディーラー系代理店への普及も本格化する見通しだ。「e-JIBAIは利用するほど処理単価が安くなる料金設定にしており、損保各社も代理店にメリットを訴えかけ、パソコンに不慣れな代理店にも普及を図っている」(石井敏愛・損害保険ジャパンIT企画部課長)。

 登録申請書に添付する「完成検査終了証」と「譲渡証明書」を発行する自動車業界では、メーカーごとに「民間情報処理機関」へデータ提供する準備を進めてきた。自賠責証明書は、OSS化されたあとも契約者に対して紙の証明書を引き続き発行しなければならないが、完検証と譲渡証は「民間情報処理機関」に電子データを送信すれば紙の書類を発行せずに済む。このため、自動車メーカーではOSSが導入された地域から添付書類を電子化に切り替える計画だ。

 問題は電子データの登録費用。「民間情報処理機関」には自動車検査登録協力会が名乗りを上げる準備を進めている。1件当たり75円程度の費用負担で事業計画を作成、国土交通省に登録申請したい考えだが、「75円では電子化して紙をなくすメリットがない」(日本自動車工業会担当者)との声も出ている。

  • 1