未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>53.ウイング

2005/11/21 20:43

週刊BCN 2005年11月21日vol.1114掲載

ログ解析ツールでパッケージメーカーに

 ウイング(樋山証一代表取締役)は、ソフト開発、SI(システムインテグレーション)企業からパッケージソフトメーカーへと、わずか2年で転身を遂げた。

 2年前までパッケージソフトの実績はほとんどなかった。だが、セキュリティ関連の自社開発ソフトの販売が急伸し、パッケージソフト事業が今年度(2006年7月期)の売上高約11億6000万円(見込み)の半分を占めるまでに成長した。

 同社をパッケージメーカーへと生まれ変わらせたソフトが、ログ(情報の記録)収集・解析ツールの「ALL Watcher(オール ウォッチャー)」。この2年間で急速に注目を浴びたが、発売した01年7月直後はなかなか販売が伸びなかった。

 しかし、セキュリティ製品・サービスへの需要の強さが追い風となった。同ソフトが備えるアプリケーションやファイルへのアクセス履歴など11種類のログを収集・管理できる機能と、「使う人にストレスを感じさせない操作性」(鈴木淳文・常務取締役プロダクトソリューション事業部事業部長)がユーザーや販売パートナーから評価された。2年間で納入企業は550社を超え、クライアント数は15万件を突破した。03年から丸紅ソリューションを中心とした間接販売を開始したことも奏功した。

 樋山代表取締役は、ユーザーからの高い評価を受けて、中長期的にオールウォッチャーの開発・販売事業を中核に据える計画を打ち出している。3年後の売り上げ目標25億円のうち、オールウォッチャーを軸にパッケージソフト事業が、全体の約70%を占める計画を策定した。

 オールウォッチャーは、今年度末までに導入クライアント数を25万件以上に伸ばし、3年後には100万件を突破させる。

 そのため、主要都市だけでなく、販売パートナーを現在の約20社から40社まで拡充して、全国の顧客にアプローチする。また、来年1月には、ASP(アプリケーションの期間貸し)形式のサービスとしても同ソフトの機能を提供する予定だ。

 さらに、海外市場にも進出する。すでに英語、中国語対応が完了しており、まずは中国市場に打って出る。中国現地の商社を通じて販売する計画だ。将来的には欧州、米国にも進出し、「ログ収集・解析で一番知名度が高い製品にまで成長させる」(鈴木常務)考えだ。

 1つの製品で一気にメーカーへと転身を遂げたウイング。「SIとソフト開発をやめることはない」(樋山代表取締役)が、パッケージソフトへと今後もリソースを集中させていく。(木村剛士)
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