防塵専用端末で生産進捗を管理

 アルミ鋳造自動車部品会社の栗田アルミ工業は、第2次世界大戦で使用された一式戦闘機「隼」など、航空機を製造した中島飛行機(富士重工業の前身)に勤務した栗田容和・現社長の父、栗田孝一氏によって創業された。先代は飛行機の車輪を格納する「油圧」の設計技師。退職後に独立して同社を創立したという経緯がある。  

 栗田社長は、以前からITに興味を抱いていた。実際、DOS/V版のパソコンで「資金繰り」などを計算していた。3年前からは、富士重工業以外に日産工機や他の自動車部品メーカーと取引を開始。鋳造に加え、アセンブリ(組み立て)や加工など、新分野へも参入している。それだけに、以前からIT化への関心が高かった。今回のIT化でITコーディネータ(ITC)を招いたことについて、「社内のIT化は単独ではできなかったし、ITCと出会った縁を生かしたかった」(栗田社長)とみており、千載一遇のチャンスだったと捉えている。

 2004年11月に立ち上げたIT化を議論する「経営戦略検討会議」では、まずは部品生産の実績収集を「自動化」することから開始した。ここでの議論を基に、同会議の参加メンバーでありITCでもある受託ソフトウェア会社、ユー・ドムの織田幸博・経営企画本部IT担当とSIerの茨城日立情報サービス(IJS)の大久保賢二・主任技師は、システムを検討する。

 通常の構成は、工場内にパソコンやモバイル端末を配置し、工員に作業進捗を入力させ、既存の「総合支援システム」で自動集計するというものだ。しかし、「高齢者や外国人が多くてパソコン入力が難しく、それだけではなく、工場内のアルミ粉塵でパソコンが故障する可能性が高かった」(織田・IT担当)。

 そのため、パソコンに防塵対策を講じ、ICカードに作業項目をタッチパネルで読み込む専用端末をIJSが1台約60万円弱で開発した。「『現場に優しいIT』が合言葉であることを実感していた」(大久保・主任技師)と、経営戦略から必要なITを割り出した集中的な議論が、実際のシステム開発で役立ったと思い起こす。

 システム再構築の初期投資は、専用端末20台やLAN構築などで約3400万円。現在も月1回、同会議に出席するITCの堀越眞哉氏(星データ企画代表)は「現システムを進化させるため、今も議論が続く」と、次の課題である在庫管理システムの導入に向けて精を出す。陣頭指揮を執る栗田アルミ工業の勝山勲・取締役総務部長は「ITCと出会うタイミングが、当社の改革時期と合致した。最終的には、社内外のSCM(サプライチェーンマネジメント)と連携したい」と、構想を膨らます。

 同社の事例は経済産業省主催の06年度「IT経営百選」で最優秀賞を受賞。現在、ITの必要性を感じ、社内でシステムアドミニストレータの養成を開始した。ITを社内でも深く理解し、変化の激しい自動車業界で新市場の開拓を目指す。(谷畑良胤●取材/文)