外注先も使えるEDIシステム

 京都府には、従業員数20人以下の中小・零細製造業が約5500社も所在するといわれる。田中精工は、これらの中小製造業10社を外注先として活用し、精密ダイカスト部品・金型の設計・製作業を展開している。社員数は約120人、昨年度(2008年3月期)の売上高は16億円を超えた。今年11月で創業63年目を迎える老舗製造業だ。

 その同社は、ITコーディネータ(ITC)、坂田岳史氏(ダイコンサルティング代表取締役)の協力で、EDI(電子データ交換)システムを構築した。自社利用だけでなく、外注先企業も使えるWeb型のEDIで、このシステムで下請け先も含めた高度な生産工程の管理にチャレンジしている。外注先も巻き込んだEDIシステムというコンセプトが認められ、経済産業省の07年度「中小企業戦略的IT促進事業」に採択されて、国の支援を受けて開発した。4か月ほどの開発期間と3か月のテスト・導入期間を経て、今年4月1日に本格稼働している。実績を評価され、経産省の07年度「中小企業IT経営力大賞」で139社が認定を受けた「IT経営実践企業」の1社に選ばれた。

 新システム開発の経緯を探れば、発端は1年半ほど前の06年12月までさかのぼる。田中精工は、「ITは経営力を高めるけん引ツール」(坂本栄造・取締役部長情報システム担当)として数十年前から位置付け、これまでITを積極的に取り入れてきた。製造業の要といえる生産・工程管理システムを初めて稼働させたのは20年ほど前の1987年。この頃から正社員としてプログラマを常時3人抱え、システム開発はITベンダーに外注せずに自前で作ってきた。「成長を支えるツールとしてITを重要視しており、ノウハウ蓄積の観点から自前開発が外注より適している」との方針があったからだ。

 ただ、IT経営に積極的な田中精工にも悩みがあった。それが、外注先の工程管理。「社内作業は高度な生産管理が実現できていた。でも、外注先業者の進捗管理がブラックボックス化していた」のだ。田中精工の外注比率は売上高の約30%。社内作業を情報システムで緻密に管理しているとしても、3割を占める作業工程が“見える化”できなければ、「多品種少量生産が当たり前の現状で品質向上と短納期、コスト削減を実現することができない」。

 そこで06年12月、坂田氏の協力をあおぎ、外注先の工程管理もできるEDIシステムの開発を決意する。ユニークなのがシステムの企画立案方法だ。外注先の意見を取り入れるため、10社の外注業者と協議会を設立。田中精工と坂田ITC、外注先という3者共同体制でプロジェクトを推進する形式を取ったのだ。(木村剛士●取材/文)