いよいよマイナンバー(社会保障・税番号)の通知が始まった。全国の自治体は来年1月からの制度スタートに向けて準備に大わらわだ。
今回注目するのは、全世帯に配布される「通知カード」(紙製、ICチップなし)や、個別申請によって入手できる「個人番号カード」(プラスチック製、ICチップあり)。そこには、転居先の住所などを追記する領域がある。ちょうど自動車の運転免許証の裏面に、転居先の住所を追記する要領と同じだ。
自治体は、これまでも「住基カード」や外国人向けの「在留カード」などに追記業務を行っていたが、マイナンバーの通知/個人番号カード(マイナンバーカード)となると、全住民が対象になるため、従来とは比較にならないほど追記業務が増える。

マイナンバー対応のカード追記プリンター「CX-M1700」 そこでプリンタメーカーのキヤノングループでは、マイナンバーカードへの追記業務が激増することを見越して、マイナンバーカードに対応した追記プリンターの販売を、この9月にスタート。結果、「全国1700あまりの自治体のうち400自治体近くから引き合いが殺到している」(キヤノンファインテックの松本晃・プリントシステム事業企画課課長代理)と、カード追記プリンターとしては“大ヒット商品”になりつつあるのだ。
ほとんど普及しなかった住基カードや外国人向けのカードは、追記の対応件数が少なかったが、マイナンバーカードは発行予定枚数が桁違いに多い。自治体だけでなく、自治体の業務システムを担当するSIerからも「マイナンバーカードの追記プリンターの開発要請」があったことから、およそ1年かがりでマイナンバー対応のカード追記プリンター「CX-M1700」(写真参照)を開発してきた。
大切なマイナンバーカードの追記業務で“誤記”は極力避けたい。ただでさえ小さな追記スペースに誤記してしまうと、修正が厄介であるばかりか、業務効率も落ちる。そこで同社では、住民基本台帳システムをはじめとする、自治体の基幹業務システムとカード追記プリンターを、直接接続してミスを防ぐ仕組みを推進している。

キヤノンファインテックの松本晃課長代理(左)、キヤノンMJの桂川誠氏 基幹システムとの連携には、自治体のシステムを担当するSIerとの連携が不可欠であり、製品開発と並んで「自治体に強いSIerとの連携にとりわけ力を注いできた」(キヤノンマーケティングジャパンのスモールフォーマットプリンタ企画課・桂川誠氏)と話す。こうした営業努力の甲斐もあって、自治体に強い全国SIerの半数あまりから、直接的なデータ連携の対応を取り付け、拡販に向けた確かな手応えを感じている。(安藤章司)