▼アジアで発展するIT都市の技術と文化交流を目指す「e-Silkroad」構想は、最北端の都市が札幌、最南端の都市が南インドのバンガロールだ。バンガロールはその昔、英国人が避暑地としてつくった街。海抜920mで、住みやすい気候だ。ガイドブックには近代都市とあった。シンガポールからバンガロールに入ったせいか、街は“予想外れ”の近代都市だった。正直に第一印象を記そう。排気ガスが多い。交通ルールはない。クラクションは鳴らしっ放し。前を走る車の後ろに、「OK!HORN」と書いてある。追い越すときには警笛を鳴らせ、というわけだ。この騒音で旅の疲れが増した。

▼道路は“交易の道”だ。経済の動脈である。自由に行き来する人や車の量がそのままGDPに影響する。道路の整備は文明の浸透を図るバロメーターだ。それなのに、道路での優先順位は、どう見ても「牛」である。牛(写真○上)への崇拝は宗教的なものだから、口をはさむことができない。それでも地中には数年前から光ケーブルの敷設工事が始まり、幹線はすでにその作業を終え、牛と共存する文化が進行中だ。光ケーブルの中はコンピュータのデータが走っている。将来にわたって道路に牛の歩行があっても、送信に何ら影響を受けない。光ケーブルは道路と同じ交易の道だ。さらにサテライトを使えば、24時間休みなく世界につながる太い経済の道ができることになる。

▼1991年にソ連が崩壊した後、インド政府は西側の資本主義国に目を向けた。IT産業に投資先を絞り、国家プロジェクトでバンガロールにソフトウェア・テクノロジーパーク・オブ・インディア(STPI)を設立した。現在982社のソフト会社が登録し、オペレーション・センター(写真○下)が、7つのアンテナによる衛星通信で24時間、世界に散らばる顧客と交信している。ソフト企業団体のNasscom発表によると、インドの01年度上期のソフト輸出は前年同期の1304億ルピーに対し、約33%増の1750億ルピー。通期予想は前年度比30.5%増の3700億ルピー。大変な伸長だ。それでも下期予想は、NY911の影響で下方修正している。日本円に換算して、およそ年間9000億円のソフト産業だ。受注額が発注先国の平均価格の30%とすれば、3兆円近い規模のソフト受注となる。国別占有率はアメリカ62%、日本3.5%。バンガロールはソフト開発の大きな胃袋をもつ牛のようだ。日本のソフト開発も丸呑みされそうだ。(本郷発・BCN主幹奥田喜久男)