旅の蜃気楼

<e-Silkroad編 アジアのIT利用技術立国を目指せ>その10 共産党は宗教的存在

2002/03/11 19:47

▼インドに比べて中国は近い。上海・浦東空港まで成田から3時間弱だ。福岡へ行く気分で機内ビデオを1本見ていたら、見終わるころに空港到着のアナウンスが入る。つい先ごろ、上海から成田空港への帰路に要した飛行時間は2時間。高速道路を使って都内の自宅に着くのに2時間かかった。成田が遠いのか、上海が近いのか。もちろん、大きな声で「成田が遠い!」。皆さん、中華料理と上海バンドの光の祭典を見に、春分の日の連休にお出かけになったらいかがですか。ビザは3日間で出るが、旅行代理店に任せて1週間を見ておいたほうがいい。さて、中国政府の上部組織は共産党だ。中華人民共和国は1949年、上海で誕生した。党員の数は98年現在で6100万人。13億人の国を4.6%の人で支配している。日本に当てはめると、552万人に相当する。が、この数値の比較がどんな意味をもつのかは、別稿に譲りたい。

▼共産党員になるには申請して認められるまで最低3年、長い人で30年かかるという。昔の科挙(官吏登用)試験ほどの難関と考えてはどうだろうか。党がすべてだから、宗教は党の管理となる。共産党がいわゆる宗教的存在といえる。ここがインドと違うところだ。インドは宗教が生活というか、生きるための基本だから、すべて宗教が優先する。牛が道路を歩く姿がその象徴だ。インドが国の発展のために、2010年までに牛の放牧を規制するとは考えにくい。宗教優先は文明の発展にはどうみても阻害要因となっている。中国は逆に、国の発展のために意思決定されると、有無を言わせない強制力をもっている。例えば、飛行場などすぐにできる。その代わり、立ち退きを命ぜられた人は、本人の意思にかかわらず、移転だ。中国の街(国)づくりはプランができたら即実行、完成の期間が短い。

▼浦東空港から中心街へのアクセスはリニアモーターカー。この工事も早い。ドイツの技術で進んでいる。水、電力、交通機関、通信インフラ、ビルの基盤整備は、見る見るうちに進んでいる。上海の人も、海外から上海を訪れる人も、この国家建設の進展には力強さを感じるだろう。東京オリンピックの建設風景を体感した読者の方には、納得していただけるであろう。上海には香港の機能をすべて飲み込んだ金融センター(写真)ができる。これはバブルなんだろうか。(本郷発・BCN主幹奥田喜久男)
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