「ワインに詳しい人は誰だと思う?」と友人、知人に聞いて回ったところ、最も多く名前が挙がったのが、ソムリエ世界一の田崎真也さんと「血がワインでできている」川島なお美さん。田崎さんの資格はみんな知っているとしても、川島さんがワインエキスパートという資格をお持ちだって知ってました?

 日本ソムリエ協会が認定する資格は、この2つにワインアドバイザーを加えて計3つ。ソムリエの認知度がダントツに高いため、一番取得が難しそうに思えるかもしれないが、3つの難易度は全く差がない。1次の筆記試験の問題は同じだし、2次の口頭試問と試飲は、内容は若干異なるものの形式は同じ。ソムリエのみサービス実技が加わる。

 では、この3つの資格、何が異なるのかといえば受験者の職業。レストランなどサービス業に従事している人はソムリエ。卸、小売りなどの酒類販売やワイン学校の講師はワインアドバイザー。そして職業的にはワインと関係ないけれどワイン好き、という愛好家のための資格がワインエキスパートだ。

 私の職業はライターだが、1998年にソムリエ資格を取得した。そう、この流れからお察しの通り経歴詐称である。こんな公の場で発表していいのだろうか…。2次試験では自分が働いている店の制服を着用するのが決まりだが、私たちウソものは東京の合羽橋で買った真新しさが恥ずかしいソムリエエプロン。

 なぜ、私が世間を欺いてまでソムリエにこだわったかというと、当時はもとより今でもワインアドバイザーやエキスパートがソムリエと同等の資格だということが認知されていない、せっかく勉強するならみんなが知っている資格にしたいというミーハー心からだ。

 しかし、この資格が今の仕事に役立っているかというと答えはノー。たとえば私が今寄稿している日本最古のワイン専門誌「ヴィノテーク」のスタッフは、海外でも一目置かれる存在だが、資格にはとんちゃくしていない。海外のジャーナリストたちももちろん無資格で、むしろ私がソムリエ資格を持っていると言うと、サービス畑出身かと聞かれるほど。

 だから時々、ソムリエなんてスゴイですねと言われると、ソムリエという言葉が独り歩きしている日本と、資格に頼るほかなかった未熟な時代の自分がよみがえり、居心地の悪さを感じてしまう。ワインは知識ではなく楽しむもの。今は知識に頼った記事よりも、自分が楽しんだ方が、読んだ人にも「飲んでみたい」と思ってもらえるような気がしている。