旅の蜃気楼

「日はまた昇る」

2005/10/24 15:38

週刊BCN 2005年10月24日vol.1110掲載

▼「日本経済は黄金時代」という見出しが書店で目を引いた。PHP研究所が出版する「Voice」11月号だ。明るい見通しは気分がいい。「ほんとかな」と思いつつ、買ってしまう。「人口減少、恐るるに足らず」。日下公人と伊藤洋一両氏の対談がのっている。少子化を問題にする前に、隣国の出生率を比較すると、「日本は1.28人、韓国は1.16人、中国は限りなく1に近い」。人口の減少は東アジアの傾向で、日本だけの現象ではないことを認識しておこう。

▼これからは国内総生産(GDP)ではなく、「1人あたりの富」、いわゆる「豊かさ」に関する統計をもっと充実させ、これを価値基準にしよう、と指摘する。続いて、原田泰氏も、「1人あたりのGDPこそ重要だ」という記事を寄せている。結論として、1人ひとりの「豊かな生活」を求めようというわけだ。大賛成だ。

▼また他の執筆者、木村剛氏は「負け犬エコノミストに告ぐ」という見出し記事の中でいう。「ライブドアの堀江社長にいろいろ言いたいことはあるだろう。だが、ベンチャー企業を率いる新参者にすぎないではないか。なぜこの国は、たった1人の挑戦者に『頑張れ』といえるだけの余裕がないのだろう。中小企業の社長たちは日々、競争に晒されている。日本は不思議な国で、大企業ほど政府の保護を受けるが、中小企業の世界はむき出しの資本主義である」と。もう一誌紹介したい。イギリスの「エコノミスト」だ。10月8日号の表紙を富士山の写真で飾り、「The sun also rises」と刷り込んでいる。日本は過去15年の経済は停滞したが、この先15年は成長すると指摘。その象徴的な出来事として、ライブドア・堀江社長の、「社会にある暗黙のルールには服従しない」姿勢を新時代感覚の萌芽としてとらえている。そういえば、弥生を買収して、その業務ソフトを使っている企業に資金融資する仕組みをさらに拡充する事業姿勢は、新しい風である。(本郷発・奥田喜久男)
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