【本郷発】北京オリンピックをテレビ観戦している。連日繰り広げられる感動と落胆の渦の中で、国家と個人の生き様が浮き彫りになる。勝者はメダルを首に下げ、敗者は頭を垂れる。優勝候補の選手はその国の人口の数だけ期待される。中国の選手は13億人の感動と落胆を受けることになる。なんと強烈な重圧なんだろう。男子110メートル障害の劉翔選手がスタート前に棄権した。女子マラソンを棄権した野口みずき選手のことを思い出す。すばらしい試合展開を期待していたし、優勝して欲しかったからとても残念だけど、期待の重圧に押しつぶされないで欲しい。東京オリンピックの男子マラソンで、金メダルがとれなかった円谷幸吉選手の自殺の顛末を思い出すからだ。

▼五輪開催国・中国の熱狂的な応援の質と量、およびメダルの獲得数は戦略に基づいている。しかし、競技によっては番狂わせもある。女子バドミントンの中国の優勝候補チームを破った末綱・前田組は、勝った瞬間に床にひれ伏して体を震わせた。あり得ないことを成し遂げたからだろう。一方の中国選手は呆然というか、憮然とした表情であった。気持ちの持ち方がいかに雌雄を決するかといった試合を目の当たりにした。勝ち戦の側に立っていたから気分は良かったが、あちら側なら胃が痛くなっていただろう。

▼オリンピックは一大イベントだ。選手を主役とすれば、大会運営者は裏方だ。裏方は人ばかりではない。これまでのオリンピックは最先端のIT技術が支えてきた。公式スポンサーがそれだ。そのひとつに中国のレノボがある。ノートPC「ThinkPad」の事業をIBMから買収した企業だ。もともと開発部隊は日本IBMの大和研究所だった。長野オリンピックでは大活躍した。今年のオリンピックでは、大会運営の裏方を支えるIT技術の話題が伝わってこない。残念だ。2016年の東京オリンピックの開催が実現したら、ふんだんにデジタルコンテンツの特徴を生かしたインターネット・オリンピックと言えるほど最先端技術を生かした大会を期待する。8年後にはネットで感動と落胆のドラマを目の当たりにして手に汗を握りたい。(BCN社長・奥田喜久男)