旅の蜃気楼

上野選手の速球に唖然、呆然

2009/04/20 15:38

週刊BCN 2009年04月20日vol.1281掲載

【所沢発】上野由岐子が投げた。速い。そして重い。目の前でその投球を見ると、ボールがミットにあたる「パシーン」という音を聞くだけで、ぞくっとする。違う。これは違う。もともと備わった資質と、鍛えた筋肉と、集中力がスパークしている。日本の女子ソフトボールは北京オリンピックで金メダルを取った。が、ソフトボールは競技種目として最後となった。オリンピックの競技種目の復活に向けての第42回女子1部リーグが開幕した。4月11~12日、西武ドームに12球団が集まって、熱戦の火蓋を切った。

▼ルネサステクノロジ高崎事業所とはどんな会社なのか。上野選手の大活躍で、この社名を知った。さっそく、ネットでググッてみる。「ルネサステクノロジは、世界中の人々の生活のいたるところで存在することで、安心・快適・夢を支え続けます」が企業理念。日立グループの半導体企業だ。同じ日立に強いチームがある。日立ソフトウェア女子ソフトボール部だ。やはりピッチャーが強い。上野選手と同等のように見えた。企業対抗戦は応援合戦も見ものだ。日立ソフトの応援団は、選手以上の熱戦ぶりだった。この一体感はすがすがしい。

▼日立製作所の決算は、はなはだ芳しくない。女子ソフトボールの活動にも、いろいろ影響が出ているだろう。しかし、西武ドームの熱戦はスカッとしたものだった。WBCの日韓戦でも同じように、手に汗を握った。ドイツで見たワールドカップのオーストラリア戦。選手たちがピッチで呆然と立ち尽くした一瞬。あの悔しさは忘れられない。でもいい思い出だ。スポーツは勝敗が明白だから、わかりやすい。女子ソフトボールのオリンピックの復活は2016年を目指している。そのとき、上野選手は30歳を超えるから勇姿は見られないだろうが、宇津木妙子、宇津木麗華、上野由岐子がつなぐ、スポーツの感動は新たなページを更新していることだろう。そのときが楽しみだ。(BCN社長・奥田喜久男)
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