▼ガタガタ、ギシギシ……。この耳につく台車の音を聞くと、「あ、日本郵便の『ゆうパック』が来たな」と分かる。好意的に捉えているわけではない。競合する日通やクロネコヤマトなど、“民間”の宅配便業者が使っている雨よけのフタが付いた台車は「スー、シャー」した音で、気づかないうちに通り過ぎる。

▼小泉政権時代に郵政民営化が始まり、日本郵政グループとして“民間”になったはず。だが、台車ひとつとっても利用者への配慮に欠け、ここまでは民営化の利点を感じることが少ない。政権が交代し、民営化は逆行する気配。社長には元大蔵官僚が就くなど、鳩山政権が掲げる「官僚主導脱却」に疑問が残る。

▼「ユニバーサル・サービス」を国の下で再び立て直す―。これが現政権の意図なのだろう。しかし、国民新党や民主党の大票田である特定郵便局長らサービス提供側だけの論理に終始するなら、郵政見直しは失敗の憂き目をみるだろう。利用者にとって価値のあるサービスをつくり出すことが求められる。

▼IT業界の目からみると、SaaSの口火を切ったのは日本郵政グループだった。2年前、セールスフォースのCRMを大規模導入したからだ。偶然にも、いったん保留にはなっているが、日本郵便と統合を計画していた日通も同じCRMを入れた。提供ベンダーが異なり、特別な関係はないだろうが、顧客情報を事業に生かす方法は異なるだろう。折角だから、日通の利活用を学び日本郵便の利用者向けサービスをつくってほしい。