BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『アホの壁』

2010/04/28 15:27

週刊BCN 2010年04月26日vol.1331掲載

 超ベストセラー「バカの壁」とよく似たタイトルで、著者が筒井康隆となれば、大半の人は“パロディ”と思うことだろう。だが期待に反して、この本は正面から「アホ」な行動を起こす人を分析する、真面目な筒井流人間論である。

 第一章「人はなぜアホなことを言うのか」では、実際にあったアホな行動を例にとり、なぜそのような挙に出るのかについて、心理的考察がなされている。あるビール会社のパーティーで乾杯の音頭をとる役目を仰せつかった取引会社の社長は、あろうことか商売敵の会社名を挙げて大声で万歳を叫んでしまった。「いや、これはギャグです」と取り繕い、仕切り直しを許されたのだが、二度目もまた同じ商売敵の名前を大声で叫んでしまったというのだ。「こうした局面暴言は、それが言ってはならないことであることを本人が必要以上に自覚している時に起ることが多い。これはつまり、潜在意識では、それを言いたいのだということになる」と分析されている。

 第五章「人はなぜアホな計画を立てるか」には、うなずくビジネスパーソンが多いはずだ。よいところだけを数え上げるアホ/批判を悪意と受け取るアホ/自分の価値観にだけ頼るアホなどが列挙されている。

 ただし、著者はアホの悪口を並べ立てるだけではない。「アホは社会の潤滑油ではないのか、(略)良識ある人ばかりがそつなく時代を押し進めていく綺麗ごとの世界を考えると、なんとなく寒ざむしい気分になる」と擁護する。(止水)


『アホの壁』
筒井康隆著 新潮社刊(680円+税)
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