BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『会社の「強み」が企業を壊すとき』

2011/03/24 15:27

週刊BCN 2011年03月21日vol.1375掲載

 日本IBMの幹部から、コンパックコンピュータ日本法人の社長に転じた経験をもつ著者が、組織論を展開する本。

 タイトルにある「会社の強み」とは、IBMの場合、群を抜いた知名度であり、ユーザーからの信頼度の高さである。そのような強みを形成してきたのは、IBMが垂直統合型企業であることが大きな要素となっている。対してコンパックは、創業以来の水平分業型企業である。では、垂直統合型よりも水平分業型のほうがすぐれているかといえば、必ずしもそうではないというのだ。

 1980年代に垂直統合型で大成功を収めたIBMは、産業構造が水平分業型に変化しつつあることを十分に認識しないまま、その成功モデルを維持しながら変革を模索した。一方コンパックは、別の企業が開発した部品やソフトウェアを組み合わせてハードウェアを完成させるという典型的な水平分業型である。両社の勝敗を分けたのは、「インテル製品採用のスピード」だった。IBMはインテルが開発した32ビットのマイクロプロセッサを搭載することをためらった。コンパックは即決で採用したことによって、急成長を果たした。

 だが、水平分業型の弱点は部品メーカーなどの事情に大きく左右されることだ。そんなこともあって、コンパックは創業以来わずか20年足らずでヒューレット・パッカードに買収されてしまった。IBMも一時期、水平分業型を試みたが、結局は垂直統合型に戻っている。違いが際立つ両社の対比は興味深い。(止水)


『会社の「強み」が企業を壊すとき』
村井 勝 著 執筆協力 渋谷高弘
日本経済新聞出版社刊(1700円+税)
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