インクジェットといえば、真っ先に思い浮かぶのはプリンタだが、この本は、プリンタにとどまらず、インクジェットという技術が切り開く新しいものづくりについて、やさしく解説している。

 第一章は、インクジェットの歴史と原理について。ルーツは19世紀にさかのぼる。源流の一つは、イギリスの物理学者、ウイリアム・トムソンの研究といわれている。ただし、「インクを飛ばして印刷する」という彼が唱えた原理が、プリンタという実用機器として日の目をみるのは、20世紀に入ってからのことだ。1960年代に「コンティニュアス(連続噴射)方式」が誕生し、70年代には「オンデマンド方式」のインクジェットプリンタが登場した。

 オンデマンド方式は、針を熱してインクを飛び出させる「サーマル方式」と、スポイトのようにインクを押し出す「ピエゾ方式」の二つに大別される。日本のプリンタメーカーでは、前者の方式はキヤノンが採用し、後者はエプソンが取り入れて、市場で熾烈なシェア争いを繰り広げている。

 第二章以降は、インクジェットの技術が応用される分野の広がりについての解説だ。可食インクでケーキに似顔絵を描いたり、家の外壁にプリントすることもできるようになった。さらにすごいのは、医療分野での活用だ。インクジェットの印刷技術は二次元から三次元へと進化し、医療現場では、3Dプリンタによって、欠損した骨を人工素材でつくる技術もすでに実用化されている。その進歩の過程を読むのは興味深い。(仁多)


『インクジェット時代がきた! 液晶テレビも骨も作れる驚異の技術』
山口修一/山路達也 著 光文社 刊(740円+税)