歴史の反復に気づく

 ヒト、モノ、カネが国境を越えてめまぐるしく移動する現在、ビジネスパーソンには国際的な感覚が求められる。現下の国際情勢が、どのような積み重ねを経て成立しているかを正確に認識し、状況を見通す必要がある。つまり、過去に起きたことのアンソロジー(類比)によって、現在の出来事を考えるセンスが求められる──というのが本書の言いたいところである。

 とはいえ、この本は世界史の通史的な解説をしようとするものではない。「多極化する世界を読み解く極意」「民族問題を読み解く極意」「宗教紛争を読み解く極意」という三つの章立てで解説している。例えば「多極化する世界」のキーワードは「新・帝国主義の時代」。1870年代の旧・帝国主義に対して、ベルリンの壁崩壊(1989年)以降の現代を新・帝国主義と定義づけ、類比を試みている。

 帝国主義が台頭する背景には、覇権国家の弱体化がある。かつて覇権国家だったイギリスが弱くなると、ドイツやアメリカが台頭し、群雄割拠の帝国主義の時代が訪れる。その後、二回の世界大戦とソ連崩壊を経て、アメリカが圧倒的な覇権国家として君臨するようになる。そして、同時多発テロ事件やリーマン・ショックを経て、アメリカの弱体化が明らかになると、ロシアや中国が軍事力を背景に、露骨に国益を主張するようになるという図式である。今、各国で起きていることを世界史の目を通してみれば、冷静に観察できることを教えてくれる。(仁多)


『世界史の極意』
佐藤 優 著
NHK出版 刊(780円+税)