BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『人工知能に負けない脳』

2015/10/08 15:27

週刊BCN 2015年10月05日vol.1598掲載

“人間らしさ”が問われる時代

 長らく人類が研究してきた「人工知能(AI)」。現在は、第三次ブームだといわれている。背景にあるのは、人工知能を実現するためのプログラムの進歩、それを実行するためのハードウェアの進歩、そして、さまざまなデータの処理を可能にするビッグデータ関連技術の進歩にある。なかでも、学習機能の一種で「ディープラーニング」といわれる新しい技術が第三次ブームを支えている。

 現時点では、人類にとって便利であるものの、人類の知能を超えるとは思えないほどのレベルであり、脅威と感じることはないだろう。しかし、技術の進歩を考えると、いずれは人類を知能で超える日が来るのではないか。それがいわゆる「2045年問題」。2045年には、人工知能が人類の知能を超える日がくるという。人類を超えた人工知能は、人類の知恵を必要とせず、自分自身で自分を改良し、進化していく。人工知能が「人類最後の発明」とされるのは、そのためだ。ブラックボックス化した人工知能は、人類にとって間違いなく脅威となる。

 では、来るべき“人工知能時代”に対し、人類はどのような備えをするべきなのか。脳科学者の茂木健一郎氏が、人類の脳の特性、人工知能の得意分野を解説し、これからの人の生き方を指南するのが本書。人類が磨くべき能力に加え、人工知能との共存方法なども紹介している。人が人らしく生きることを“いい意味で「ちゃらんぽらん」であれ”という茂木氏。脳科学者の視点で生き方を指南するその内容は、人工知能の記述を省いても参考になる。(亭)


『人工知能に負けない脳』
茂木健一郎 著
日本実業出版社 刊(1300円+税)
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