ITと金融の関係を整理

 バズワードで終わるのか否か。「FinTech」は重要なキーワードになっているが、どこかスッキリしない。もやもやした感じがするのは、現在の金融ビジネスがそもそもITの上で成り立っているからだ。金融数学や金融工学など、高度な計算処理をビジネスにもち込んだのも、金融業界だった。IT業界においても、金融業界に長くかかわってきた人は、FinTechというキーワードには違和感を抱くはずだ。

 著者もその一人。本書の執筆は、著者自身がFinTechとは何かを調べ始めたのがきっかけだという。金融業界に長くかかわってきている著者だけに、書籍でお約束のFinTechの始まりから歴史をていねいに解説している。歴史本として知識を得るには最適だろう。ちなみに、FinTechの元祖は、IBMということになっている。FinTechの歴史は、コンピュータの歴史というわけだ。

 FinTechがバージョンアップして、本書のタイトルである「FinTech 2.0」になる。「2.0」としたのは、これまでのFinTechと区別するためで、米国ではそう呼ばれているとしている。バージョンアップの最大のポイントは、スタートアップ企業である。新たな金融サービスや金融関連サービス、または金融関連のテクノロジーを提供する会社が一気に増えたためだ。米国では、1000社を超えるという。

 ちなみに本書によると、米国ではFinTech系スタートアップへの投資に陰りがみえ始めているとのこと。2016年は淘汰が始まり、スタートアップには厳しい年になるそうだ。(亭)

『FinTech 2.0』
楠 真 著
中央経済社 刊(1600円+税)