BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『人間にとって寿命とはなにか』

2016/08/25 15:27

週刊BCN 2016年08月22日vol.1641掲載

50歳以降は体が保証期限切れ?

 人の寿命は、どこまで予測できるのだろうか。自分の寿命がわかるなら、きっと余生の過ごし方が変わってくるはず。残り5年か10年かで、やれることにも違いが出てくる。

 遺伝子は、コンピュータで容易に解析できるようになった。ウェアラブルデバイスによって、人間の生活データも簡単に取得できる。つまり、遺伝子と寿命の相関データがあれば、簡単な分析で寿命を計算できてしまう。しかも、余生を思えば、自分の寿命を知りたい人は少なからずいるはず。超高齢化社会を迎えた日本。寿命を伝える“寿命ビジネス”が成り立ちそうだ。

 そこで手に取ったのが本書である。ところが、冒頭はナマコの話三昧。著者はナマコの生物学の第一人者で、40年近く研究しているというから無理もない。ナマコは半分に切っても、両方が再生して、2匹のナマコになるという。切っては再生してを繰り返すことができるので、もはやナマコに寿命の意味があるのか疑いたくなってくる。一応、一般的には3~4年がナマコの寿命だとされているものの、何十年も生きる種類もあるという。皮膚を切り離したり、溶けたり、ナマコは変幻自在なので、寿命を計測するのが難しいらしい。

 ナマコ博士の著書とはいえ、本書のタイトルにあるとおり、ナマコから人間の寿命へと話は移っていく。興味深いのは、エネルギー消費と時間の関係。そこから寿命がみえてくる。ちなみに、具体的な数字としては、生物は心臓が15億回打つと寿命を迎えるという。小心者の身ゆえ、すぐに心臓がバクバクするので、寿命は短いのではと心配だ。(亭)

『人間にとって寿命とはなにか』
本川達雄 著
KADOKAWA 刊(800円+税)
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