世界のリーダーはなぜ禅に向かうのか

 禅はもてる。

 世界的なプロダクトデザイナーであるディーター・ラムスも禅に魅せられた一人。かれの哲学“Less, but better”(より少なく、しかしよりよいものを)は次の世代であるアップルのジョナサン・アイブに受け継がれ「iPhone」や「iPad」を生んだといわれる。そのアップルのスティーブ・ジョブズと禅のかかわりも深い。ジョブズは死の半年前に京都の碧雲荘を訪れ庭を眺めていたという。ジョブズの愛読書がオイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』だったというのも有名な話だ。稲盛和夫さんの「今日一日を一生懸命に生きさえすれば、未来は開けてくる」という言葉も禅につながる。稲盛さんは還暦を越えてから臨済宗のお寺で得度されている。

 本書は禅に魅せられたさまざまな人を登場させながら禅をわかりやすく説明してくれる。著者は30代の禅僧である。ローマ教皇に謁見したり、ダライ・ラマと会談したり、ダボス会議に出席したりと宗教の垣根を越えて活躍。日経ビジネスの「次代を創る100人」にも選出されている。

 禅が目指すものは「ゲイン」ではなく「ルーズ」だと説く。ではなぜ、ルーズである禅を世界のビジネスマンやリーダーが信奉するのか。著者はいう。失うとは余計なものをそぎ落とすこと。そうすることでもっとも大切な本質に目が向くと。グーグルやインテルなどが採り入れている「マインドフルネス」と禅の違いも端的に語る。曰く、実践することが目的で、禅はそこから何かを得ようとはしない。

 精神性を求める人が増えている。ZENは急げ。(蓼)

『ビジネスZEN入門』
松山大耕 著
講談社 刊(840円+税)