遮光器土偶はサトイモの擬人化!?

 縄文時代に数多くつくられた人型の「土偶」は、「女性をかたどった子孫繁栄の象徴」「目に見えない精霊を偶像化したもの」など諸説あり、果ては「宇宙からやってきた宇宙飛行士」説まで飛び出るほどロマンにあふれる存在である。本書では、縄文人の暮らしぶり、とりわけ命の源である食生活に焦点を当てて当時の人々の思いを読み解いている。

 人類学の専門家である竹倉史人氏は、縄文時代によく食されていたクルミ、栗、貝、トチの実、イネ、ヒエ、サトイモこそが土偶のモチーフになっていることを突き止めた。土偶が出土した場所と、当時そこに生息していた動植物の造形を照らし合わせて、「○○土偶はクルミをモチーフにしている」などと、主だった土偶を分析した。

 土偶のなかでもひときわ有名で、まるで宇宙服を着ているかのような重要文化財「遮光器土偶」は、サトイモの根の部分を擬人化したものだと指摘。本格的な稲作は弥生時代を待たなければならないが、サトイモなどの栽培は縄文後期にはすでに始まっており、その豊作を願う儀式に用いた模様だ。

 縄文人になりきって当時の食生活を丹念に検証し、人類学の知見を当てはめ、土偶が主に植物の擬人化だったことを浮き彫りにした竹倉氏のアプローチは、ITビジネスにも示唆を与える。ユーザー企業の属する業界人になりきって、その業界が抱える課題、新規ビジネスの芽を探り、そこにITの知見を当てはめることで、新しい発見やビジネスチャンスが見えてくるのではないか。(寶)
 


『土偶を読む』
竹倉史人 著
晶文社 刊(1700円+税)