BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『デジタル社会の地図の読み方 作り方』

2022/04/08 09:00

週刊BCN 2022年04月04日vol.1917掲載

現代の「地図リテラシー」とは

 堂々と話すことではないが、私は地図が読めない人間だ。現在地を確認することはともかく、そこから目的地までのルートが読み取れない。いや、読めているつもりなのだが、なんとなくわかったつもりで見切り発車すると、生来の方向音痴と適当な性格も相まって、結局全然たどり着けないのである。
 

 そんな理由もあって手に取った本書は、デジタル化によって大きく変化した地図のあり方を捉え直し、現代に適した「地図リテラシー」(活用能力)について探っている。

 地理情報システムの普及により、地図を製作するハードルは大きく下がり、ある程度の知識があれば誰でも作れるようになった。またその地図に自身が訴えたい主張に沿うデータを盛り込むことで、特定のメッセージを伝えることも簡単になっている。そんな現代だからこそ、その地図がどのような意図を持って作られているかを見抜く力が求められるわけだ。

 筆者は「地図をじっくり読んで地理的に意味のある情報を引き出す訓練」の重要性を訴えている。

 普通の地図すら読めない私にそんなことができるとも思えないが、それができない人は時代遅れになってしまうのだろう。せめて努力はしてみたい。(無)


『デジタル社会の地図の読み方 作り方』
若林芳樹 著
筑摩書房 刊 902円(税込)
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