BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『デジタル列島進化論』

2022/07/15 09:00

週刊BCN 2022年07月11日vol.1930掲載

「最後で最大の機会」を生かせるか

 日本のGDP(国内総生産)は、米国と中国に続いて世界で3位になっている。しかし、最近は労働生産性の低さが指摘され、平均賃金はこの約30年でほとんど伸びていない。戦後、大きく成長した経済の勢いは影を潜めており、閉塞感が漂っている状況だ。
 

 経済的に伸び悩んでいることに加え、かつて整備したインフラの老朽化や少子高齢化などの課題も横たわる。中国をはじめ諸外国の成長が引き続き期待される中、日本の行く末を悲観する見方は少なくない。

 本書は、田中角栄元首相が50年前に提言した「日本列島改造論」の「デジタル版」との位置づけだ。改造論は交通網の整備を打ち出した一方、本書は、日本が抱える課題の解決に向け、5Gやデータセンターなどのデジタルインフラを充実させる必要性を訴える。かつて世界を席巻した半導体産業の復活へのシナリオなど、日本企業の成長戦略についての仮説も示す。

 新型コロナ禍やロシアによるウクライナへの侵攻で、世界は大きく動いている。「最後で最大の機会」。著者が示した言葉からは、現状に対する危機感と、将来に向けた強い決意の両方がにじみ出ている気がする。(鰹)


『デジタル列島進化論』
若林秀樹、日経BP総合研究所 著
日経BP、日本経済新聞出版 刊 2750円(税込)
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