BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』

2022/10/21 09:00

週刊BCN 2022年10月17日vol.1942掲載

“無意識”を制す者が時代を制す

 2022年6月、新規上場したバーチャルYouTuber(VTuber)事務所「にじさんじ」を運営する「ANYCOLOR」の時価総額がフジテレビの持ち株会社を上回ったというニュースが流れた。読者の中にはこれを過剰評価と考える人もいるだろう。しかし、インターネットの世界で広がり始めている感覚マーケティングの視点から見れば妥当な評価なのかもしれない。

 本書で登場する感覚マーケティングとは、視覚だけでなく五感にアプローチする手法のことだ。特に有力とされているのが“聴覚”。その理由は無意識に働きかける力が強いからだと著者は説明する。例えば、VTuberは動画コンテンツではあが、情報を主に伝えるのは音声で、アバターなどの視覚情報はあくまで補助的な役割を担っている。重要なのはこの相互補完によってコンテンツ消費の負担が軽減されることだ。いまやユーザーはコンテンツの消費すら億劫に感じている。だからこそ、意識的にではなく無意識的に、つまり楽に消費させることが成功のかぎになるというわけだ。流行を予想する、ましてや生み出すのは至難の業だが、こうした新しい時代のメソッドはコンテンツの作り手にとって大きなヒントになりそうだ。(雀)
 


『SENSE インターネットの世界は「感覚」に働きかける』
堀内 進之介、吉岡 直樹 著
日経BP 刊 2420円(税込)
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