BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『カブトムシの謎をとく』
2023/09/01 09:00
週刊BCN 2023年08月28日vol.1982掲載
身近な昆虫だが、謎だらけ
カブトムシといえば、夏の思い出とともに、日本人にとっては身近な昆虫だろう。東南アジアなどでも多く生息しているが、都市部から離れた山の中にいることがほとんどで、実は日本のような人間の生活圏に生息している環境は世界的にも珍しいようだ。カブトムシ研究家の著者は、国内のカブトムシの研究はあまり進んでおらず、その生態には謎の部分もあり、近年の研究でようやく明らかになった事柄が多いと主張する。
例えば、かつては「カブトムシは日中、樹液が出る木の根元の土の中に隠れている」という説が信じられていた。図鑑にも掲載されていたこの情報を基にカブトムシを探した人は多いのではないだろうか。しかし、近年の研究により、多くのカブトムシは昼間、こずえの茂みや草むらの中で寝ていることが明らかになった。
日本には3万種を超える昆虫が住んでいるが、カブトムシのように生態が分かっていないものは、意外と多いのだという。カブトムシに関しては、小学生の自由研究の中に大発見が含まれ、学術論文につながった例があったと著者は紹介する。暑い夏はまだまだ続きそうだが、身近に飛ぶ昆虫に注意を払って観察してみると、それが世界的な発見につながることもありそうだ。(石)
『カブトムシの謎をとく』
小島 渉 著
筑摩書房 刊 968円(税込)
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