BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『文系でもよくわかる 宇宙最大の謎! 時間の本質を物理学で知る』

2023/10/20 09:00

週刊BCN 2023年10月16日vol.1988掲載

時間の流れに終わりはあるのか

 今年は観測記録を塗り替える酷暑となった。一部では10月に入っても残暑は継続し、この耐えがたい暑さがずっと続くのかと思われたが、一転して朝晩は肌寒くなり、急速に秋が深まった。これまでよどんでいた時間が一気に流れ始めた感がある。

 楽しいときは早く過ぎ、退屈な作業のときは長く感じる時間とはどのようなものか。物理的な量として定義されているものの、長さや質量といった他の量に比べると、捉えどころがない気がする。時間はいつ始まったのか。過去へのタイムトラベルが実現する可能性はあるのか。時間はこの先も永遠に続くのか。

 本書はそのような、普段科学に親しみがなくても誰もが一度は考えたことがあるだろう疑問に対して、宇宙論を専門とする著者が平易な言葉で説明を与えてくれる読み物だ。「文系でもわかる」とした分、科学の解説書としては若干の物足りなさも感じられるが、一つ一つの疑問について数ページで簡潔に述べられており、好奇心の入り口としては申し分ない。興味深いのは、時間の「終わり」についての考え方だ。著者は宇宙が膨張を続けて冷え切ったとき、時間という概念はなくなるとの立場を取る。時間には始まりも終わりもないとする考え方と、どちらがしっくりくるだろうか。(螺)
 


『文系でもよくわかる
 宇宙最大の謎! 時間の本質を物理学で知る』
松原隆彦 著
山と溪谷社 刊 1650円(税込)
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