BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『純喫茶図解』

2025/07/18 09:00

週刊BCN 2025年07月14日vol.2067掲載

個性豊かな空間に身を置きたくなる

 純喫茶がブームになっているらしい。建築やインテリア、メニューの隅々にまで店主のこだわりが詰まり、カフェとは一線を画す日本独自の発展を遂げたジャンルとして認知されているのか、人気店には外国人観光客も多く列を成しているようだ。

 本書は画家である著者が、都内18店の純喫茶を建築の図法を駆使して描いた図解が最大の見どころ。「ノスタルジック」「音を楽しむ」「ひとクセ光る」の三つのジャンルに分けて紹介しており、実際に足を運んで食べたメニューや店主へのインタビューや写真も添えている。

 イラストは、アンティークの調度品に個性あふれる床タイル、妖しく微笑むトーテムポールまで、店内の様子を緻密な絵で表現。ページをめくると、まるで実際にそのお店を訪れたような気分になれる。

 記者にとっては都内はもちろん、出張や旅行で全国各地を訪れる際には、チェーン店ではない喫茶店を探して入るのが楽しみの一つだ。紹介されている店は行ったことがないところも多く、個性豊かな空間でコーヒーを飲みながら読書をするというぜいたくな休日を過ごしたくなった。そこでしか味わえないスイーツや名物メニューだけでなく、空間そのものが純喫茶が持つほかにはない最大の価値なのかもしれない。(緑)
 


『純喫茶図解』
塩谷歩波 著
幻冬舎 刊 1650円(税込)
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