BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『浄土真宗「道場」の四季 北陸・福井に残る真宗信仰の古層』
2025/07/25 09:00
週刊BCN 2025年07月21日vol.2068掲載
共同体を支えるもの
石川県に生まれ、長年暮らしてきた。北陸が浄土真宗の盛んな土地であることは理解しており、実際にさまざまな宗教行事に触れる機会は数多くあった。しかし、本書が取り上げている「道場」については、全く聞いたことがなかった。道場は地域住民が自発的に運営するお勤めの場として、数百年の歴史がある。全国に普及していたかどうかは定かではないが、福井県の北部を中心に今でも数多く残っている。本書は道場での人々の営みを1年にわたって追いかけたルポルタージュである。本書を通じて、共同体を支える基盤としての道場や、宗教そのものの意義が伝わってくる。人々が集い、共に勤行し、ときに日常について語り合う。その営みが連綿と続けられていると思うと、尊さのようなものを感じずにはいられない。
読み終わり、地域住民が主体となって維持管理し、自主企画による生涯学習事業を展開している金沢市の公民館を思い出した。宗教施設とは異なるが、共同体を支える基盤であり、どこか道場と似ているように感じた。道場も金沢の公民館も、少子高齢化や過疎化などに伴い、そのあり方に変化を余儀なくされているという。地域社会の直面する問題の難しさを突きつけられた気がした。(無)

『浄土真宗「道場」の四季 北陸・福井に残る真宗信仰の古層』
前川仁之 著
宗教問題 刊 1870円(税込)
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