パソコン市場が縮小するなか、販売店のシェア争奪戦が激化している。高い株価を武器に出店攻勢をかけるヤマダ電機は、これまで郊外中心だった出店戦略を改め、地方の中核都市への出店に切り換えた。地方都市でヤマダを迎え撃つNEBA(日本電気大型店協会)5社連合は、かつての「地割り」を復活させ、守備範囲を明確化する動きを見せる。集客力が高いターミナル駅周辺は、ヨドバシカメラ、ビックカメラ・ピーカンが陣取り合戦を展開。一方、パソコン専門店はパワーゲームに加わらず、専業特化への道を選ぶ。

 この5月、名古屋・大須のパソコン街にヤマダ電機が進出。現在、大須は秋葉原や日本橋と同様、購買客の減少に苦しむ。大須の販売店8社で構成する販売店協会「大須AIC」は、この3月末までに上新電機と中京マイコンが業態変更のため退会。6社に減った。「ヤマダは、大須そのものよりも、6社がまだ生き残っていることに関心を示す。必ず潰しにかかる」と、関係者は神経を尖らす。

 ヤマダはこのほかにも、3月に茨城県つくば市のワンダーコーポレーション(旧カスミ家電)本社の目と鼻の先に出店。11月にはコンプ100満ボルト金沢本店の前に進出する予定だ。攻撃的な出店が評価されてか、ヤマダの株価は9000円台(4月3日現在)を維持。コジマが1000円台(同)であることを考えれば高い株価だ。

 別の関係者は、「ヤマダは、郊外店舗だけで成長するのは難しいと判断したようだ。しかし、弱みを見せれば株価が下がる。他社を食い潰す勢いで出店するのは、株価維持の捨て身の戦略。地方都市の販売店を潰すまで、ヤマダの膨張路線は続く」と予測する。

 地方の中核都市に陣地を構えるエイデンや上新電機、デオデオなどNEBA5社連合は、こうしたヤマダの膨張路線に警戒感を抱く。対抗策として、まず5社連合で競合し合う店舗を整理し、提携効果を高める。

 すでに、エイデンのお膝元である愛知県岡崎市からデオデオが撤退。上新電機も名古屋大須から撤退してエイデンに後を譲る。デオデオは、中部地区からも撤退する。上新も中部旗艦店を閉めた。「5社連合発足後、地割りを復活させた。5社それぞれが地元に戻り、外患=ヤマダに対抗する構え」と、ある業界筋は分析する。

 ヨドバシカメラやビックカメラ・ピーカンは、「ターミナル駅中心の展開で、ヤマダや5社連合との競合はない」(幹部)とあっさり構える。全国を舞台に、ヤマダと全面戦争に突入するのは5社連合であり、カメラ量販2社は駅前だけの局地戦を展開するという構図だ。

 パソコン専門店や非連合の家電量販店は、厳しい選択を迫られる。郊外は専門店の強みを出しにくいうえ、ヤマダと5社連合の激戦地だ。秋葉原や日本橋、大須など電気街は専門性を出しやすいが、ターミナル駅のカメラ量販店と競合する。「パソコン専門店は、自作パソコンやゲームなど、余程の専門性を打ち出さない限り勝てない。隙を見せると、たちまちヤマダやカメラ量販店に食われる」(専門店関係者)。

 市場縮小は、販売店の生き残り戦争に火をつけた。ヤマダの膨張路線も、「裏を返せば株価維持の自転車操業」という指摘もある。また、「地割りが復活した5社連合モデルがうまくいく保証はない。成功モデルをつくれないと結束力が弱まり、空中分解する」と危惧する声も聞かれる。「パソコン不況があと3年続けば、今の過剰出店が解消するほど店が減るだろう」(業界関係者)。生き残り戦争がヤマ場を迎えつつある。