店頭流通

パソコンショップのネット販売 実店舗に次ぐビジネスの柱に

2002/12/09 16:51

週刊BCN 2002年12月09日vol.969掲載

 パソコンや関連製品のネット販売が堅調に伸びている。実店舗に次ぐ第2の柱になりつつあるパソコン専門店や量販店もある。これらネットショップでは、従来獲得できなかった顧客を開拓し、実店舗の来店者増につなげている。最近では、中・初級者がネットで商品を購入するケースも増加。ネットショップが好調なパソコン店では、サポート力の向上にも注力する。今後は、ADSLの加入者数が増加することで、ネットショップの顧客が一層拡大する可能性が高い。パソコン市場が低迷するなか、実店舗の接客ノウハウを生かした顧客サービスが、ネットショップの収益に相乗効果をもたらしつつある。

新規顧客の獲得に注力

 ネットショップ大手のソフマップでは、「ソフマップ・ドットコム」の昨年度実績で100億円の売上高を達成した。今年度は、最低でも110億円を見込む。

 同社がネットショップに着手したのは1995年。以来、幾度となくリニューアルを繰り返した。結果、サイトをリニューアルするたびにアクセス数が上昇。新規顧客の増加につながった。

 「ソフマップ・ドットコム」に匹敵するヨドバシカメラの「ヨドバシ・ドット・コム」は、昨年度の売上高が100億円弱。今年度は160億円まで引き上げる構えだ。同社では、実店舗のショップイメージをネットでも再現。豊富な品揃えを武器に初心者層を中心に顧客を獲得し、最近では新規顧客の占める割合が30%前後に達した。

 ムラウチが運営する「murauchi.co.jpオンラインショップ」では、実店舗の本拠地である東京・八王子地区以外の消費者が購入するケースが高く、ネット購入者の90%以上を占める。実店舗である八王子本店では、八王子の顧客が多いことから、ネットショップが新規顧客を獲得していることになる。

 今年11月には約3億6000万円の売上高を達成し、単月ベースで過去最高を記録。今年度の売上高は45億円の見通しだ。ネットショップでは価格が実店舗より7%前後安い商品もあり、ビジネスマンや学生などを中心に購買層を獲得。同社の久島明・取締役本店店長は、「実店舗での購入者は末永い顧客になるケースが多い。ネットで『ムラウチ』の名が浸透すれば、実店舗の知名度向上にもつながる」と話す。

 上新電機では、「ジョーシンウェブ」と同社のグループ会社であるディスクピアのホームページをリンクさせ、30万アイテムのCD・DVDを販売する。さらに実店舗で取り扱っていない商品を揃えた「J-セレクト」コーナーを設置。

 同社の和田邦雄・取締役システム統轄部長は、「ネットショップでは“冒険”が重要。実店舗とは違った顧客層にアピールすることで、新規需要を実店舗にもたらす効果もある」と強調、今年度に20億円の売上高を目指す。

 これまでネットショップでパソコンや関連製品を購入する顧客は、パソコン上級者が大半だった。しかし最近では、中級者や初級者にまで裾野が広がりつつある。

 このため、各社ともあの手この手で顧客囲い込みに注力する。「電話やメールなどの問い合わせに対して細かい対応を迅速に行っている」(松田信行・ソフマップ総合企画部広報・IR室長)、「ネットショップは『お客様コミュニケーション部』が担当し、顧客のニーズを吸い上げている」(吉澤勉・ヨドバシカメラお客様コミュニケーション部長)、「修理時には、実店舗の修理センターのノウハウを生かした迅速な対応を心がけている」(矢澤克哲・ムラウチEC営業本部執行役員)、「今年4月にカスタマーソリューション営業部のなかに『eビジネス営業課』を新設し、さまざまな部署に散らばっていたメール配信サービスの担当者やサイトの企画担当者、技術者などを集約した」(和田・上新電機取締役)。

 電子商取引推進協議会(ECOM)が発行する「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査報告書」によれば、パソコンおよび関連製品におけるBtoC(企業対消費者)の電子商取引(EC)市場規模は、今年2600億円に上る見通し。さらに市場規模は年々拡大していき、06年に5670億円に達するとみている。

 今後は、ADSLなどの常時接続の加入者数が増えることで初級者・中級者層がネットショップで閲覧・購入するケースが一層高まることが予想される。実店舗の接客をネットショップに生かすことは、リテールビジネスにとって看過できない要素になりそうだ。
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