店頭流通

家電量販店のスクラップ&ビルド 大型店舗の出店が加速

2004/06/21 16:51

週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載

 家電量販店およびカメラ量販店のスクラップ&ビルド戦略が加速している。各量販店とも、1000平方メートルを超える大型店舗の出店を急ぐ一方、小型店舗を閉鎖する動きが目立つ。出店地域は、全国展開を一層推し進める戦略から地場固めを優先する戦略までさまざま。郊外型店舗を得意とする企業と、都市型店舗の垣根もなくなりつつある。2004年度は、各地域で生き残りをかけた競争が一段と激しさを増しそうだ。

地場を固める戦略も相次ぐ

 家電量販最大手のヤマダ電機は、今年度(05年3月期)に48店舗を新規出店する予定。出店場所は1つの地域に集中させず、今後3年間で全国各地域のマーケットシェアで25-30%を目指す。

 出店している地域のなかで、とりわけ「比較的シェアが低いのが広島県」(一宮浩二取締役副社長兼COO)であることから、ヤマダ電機にとって最大級となる「テックランド広島中央本店」(広島市中区)を6月11日に出店。シェア拡大への体制を整えた。広島県では同日、「テックランド安芸坂店」(安芸郡坂町)も同時オープンしており、計6店舗体制となった。同社では広島県内の店舗数を「今後3年間で倍増させる」(同)方針で、確固たる地位を築きたい考えだ。

 広島中央本店は、ヤマダ電機にとって初の都市型店舗となる。来年度に大阪・難波への出店を計画しているため、広島中央本店を「都市型店舗を出店していくための“試金石”」(同)と位置付ける。

 全国に店舗網を広げるという点では、ギガスケーズデンキも積極的に取り組む。ギガスとの統合により現段階で200店を超える店舗数となり、今年度(05年3月期)はさらに4店舗増の214店舗を予定する。

 コジマは、1000平方メートル未満の小型店舗を閉鎖する一方、1000平方メートル以上の大型店舗を増やす。今年度(05年3月期)に計画する新規出店の16店舗は、すべて大型店を予定しており、閉鎖店舗25店のうち20店舗を小型店が占める。

 同社の全店舗数は238店舗と昨年度に比べ9店舗減ることになるが、全店舗の売り場総面積では昨年度の48万9692平方メートルに対し、今年度は51万1882平方メートルへと拡大する。「郊外型の店舗は3000平方メートル級が適正規模」(小島章利社長)というコンセプトのもと、すべての店舗を「地域1番店」にするために統廃合を進める。

 ベスト電器では、「競合他社との差別化が図れる店舗を出店する」(有薗憲一社長)と、百貨店やショッピングモールへのテナント出店に力を注いでいる。広島県では、広島市中区にある「そごう広島」内にこのほど店舗をオープン。千葉県では、船橋市の大型ショッピングモール「ららぽーと」内に店を構えた。

 テナント出店により、家電量販店へ足を運ぶ機会が少ない女性、10歳代後半から20歳代前半までの学生などが新たな顧客層として獲得できると見る。また、ベスト電器では、本社が立地する「九州地区を固めていく」(同)方針で、山口県周南市より以東の地域で小型店舗を閉鎖する。今年度(05年2月期)末までに25店舗の閉鎖を予定している。

 地場を固めるという点では、エディオンも「中国地区や九州地区、東海地区への出店を増やす」(久保允誉社長)計画。しかも、「パソコンと関連機器、家電、中古品など、すべてを扱う店舗作り」(同)を徹底するため、エイデンのパソコン専門店「コンプマート」の小型店舗を中心に閉鎖を行い、エイデンの家電量販店に「コンプマート」コーナーを設置していく方針だ。

 ビックカメラの今年度(04年8月期)の出店は2店舗で来年度は未定。ヨドバシカメラは、東京・新宿東口に2300平方メートルの店舗を今年10月にオープンする予定で、「今年度(05年3月期)の店舗数は未定」(広報関係者)としながらも、出店増の可能性も匂わせる。「駅前出店」を基本に、1万平方メートル級の店舗も出店している2社だけに、競合各社にとってカメラ量販店の力は未知数といえる。

 今年度は、量販店の多くが昨年度より新規出店を増やしてくる見込み。大型店舗の出店が加速しており、全国各地域でマーケットの主導権を巡るシェア争いが激化するのは必至だ。

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