拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>21.電子ブック(下)

2005/01/31 16:51

週刊BCN 2005年01月31日vol.1074掲載

 今後の電子ブックの普及を考えると、すでに見てきたような端末やサービスの利便性の向上や、ユーザーへの認知、販促活動の強化などは当然重要になろう。また、解決しなければならない大きな課題としては端末価格の問題がある。(小林孝嗣 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部)

 現状、「シグマブック」、「リブリエ」の両端末とも4万円前後の実勢価格であり、ユーザーからみると割高感が大きい。そこで、両者とも検討しているようなビジネス利用や海外での需要開拓により、量産効果で端末価格を下げたり、また電子辞書のようなコンテンツのバンドルで端末価格の納得感を訴求するといった施策が重要となる。

 また、コンテンツ提供事業者にとっては、現状、電子書籍に関するファイル形式が多数存在することが、コンテンツ制作や管理の負担を増すことになっていると想像される。このため、今後のコンテンツの拡充という点からみると、電子書籍の規格の整理・収れんが電子書籍の普及にあたって解決すべき課題となっている。

 以上のように、電子ブック・電子書籍の普及にあたっては、まだいくつかの課題がある一方で、レンタル型のビジネスといった電子書籍ならではの取り組みや、電子書籍から紙の書籍が出版されるなど、電子ブックや電子書籍に関連して従来の紙だけのビジネスとは違った新しいビジネスの萌芽が出てきていることは、注目に値する。

 このような動きが、出版全体の市場回復や活性化への1つの解決策にもなり得るので、電子ブックや電子書籍への業界の今後の取り組みに期待したい。

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