拡大するデジタル情報機器市場

<拡大するデジタル情報機器市場>24.トリプルプレイ

2005/02/21 16:51

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

 日本におけるブロードバンド利用世帯数は、約1500万世帯を超え、世界的に見ても有数のブロードバンド大国に成長した。また、ブロードバンドを利用したアプリケーションも、IP電話や動画像の再生、EC(電子商取引)など様々なものが登場してきている。(小菅一弘 野村総合研究所 コンサルティング部門 情報・通信コンサルティング二部 副主任コンサルタント)

 本稿で取り上げる「トリプルプレイ」とは、ブロードバンドのアプリケーションのうち、高速インターネット(FTTH=ファイバー・ツー・ザ・ホームなど)、IP電話、放送サービスの3つのサービスがセットになって提供されるサービス形態である。

 トリプルプレイで最も有名なのが、KDDIが2003年10月から開始した、「光プラス」である。これは、FTTHサービスである「光プラスネット」とIP電話である「光プラス電話」、放送サービスである「光プラステレビ」の3つのサービスがセットとなって、戸建て向けで月額約9800円、集合住宅向けでは同約7300円という料金で提供されているものである。

 それぞれ個別に契約することもできるが、3つまとめて契約した方が、安く利用できるプランとなっている。

 KDDIの光プラス提供に伴い、ブロードバンドの主役になりつつあるFTTHサービスの販売においては、すでにトリプルプレイ型の販売形態が一般化しつつある。

 このようなトリプルプレイ型のサービスが登場した背景には、メールの送受信、ウェブサイトの閲覧といった「パソコン」という端末を前提としたインターネットの利用用途では、現在主流のADSLで事足りてしまい、大手キャリアがより高い月額料金を獲得できるFTTHへの移行が進まず、新たな「FTTHならではサービス」が求められていたことがあった。

 そこで、パソコンから脱却した電話や放送などの誰もが利用するサービスとFTTHをバンドルすることによって、従来までのインターネットの利用用途を拡大し、新たなユーザー層の掘り起こしや顧客単価の向上を図ろうとする狙いがある。

 ただ、現在のトリプルプレイは、既存の電話、放送サービスをインターネットというツールを使って“代替”しているだけであって、インターネットならではの独自の付加価値を生み出すまでには至っていないように思える。

 今後は、電話、放送を含めた“トリプル”にとどまらず、“第4”、“第5”のサービスと、代替ではない真の“融合”を図り、ユーザーにより高い付加価値を提供するサービスへと進化してくことが期待される。
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