大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>69.電機各社が薄型化を追求する理由

2007/10/15 16:51

週刊BCN 2007年10月15日vol.1207掲載

 過去最大の出展企業を数えて、CEATEC JAPAN 2007(10/2-6)が開催された。電機各社の出展の目玉は、薄型テレビだ。

■競争の領域が変わった

 シャープは、すでに技術発表している薄さ20ミリの次世代液晶パネルを展示。壁掛けテレビがすぐに現実的なものになろうとしていることを示した。

 ソニーも、開催前日に発表した有機ELテレビを大量に展示。薄さ3ミリを実現したテレビが、12月1日から発売になることをPRした。日本ビクターも、最薄部37ミリという液晶テレビの試作品を公開。2008年から欧州市場向けに投入する考えを示した。

 開催初日に会場を訪れたシャープの片山幹雄社長は、「薄型テレビは大画面化と価格の競争から、薄型化、軽量化、省電力化といった領域にも競争の範囲が広がった。同時に、新たな生活シーンを提供できるという点で、ユーザーにもメリットがある。情報の窓としての役割がますます強まるだろう」と語った。

 実は、展示会場以外でも、薄型化の技術が発表されていた。

 会期2日目に開かれたコンファレンス「未来予測2007-2020 -過去の延長線上に未来は無い」において、初公開となったのがPTA(Plasma Tube Array)方式による大型ディスプレイだ。

 開発したのは、篠田プラズマの篠田傳氏。元富士通研究所フェローで、カラープラズマテレビの父と呼ばれる人物だ。富士通のディスプレイ事業撤退に伴い、今年同社を退社。自らベンチャー企業を設立し、PTA方式によるディスプレイを開発。先頃、フルカラープラズマディスプレイの開発および実用化に対する貢献が評価され、IEEEから名誉会員賞を受賞している。

■薄型のほうが需要拡大に有利

 篠田氏が公開したのは、縦100センチ×横50センチ(43インチ相当)のPTA方式ディスプレイ。フィルム基板を採用、ディスプレイ部の薄さは約1ミリ、重量は約800グラムという軽量化を実現している。

 また、1メートル×1メートルのモジュールをつなぎ合わせることで、論理的には無制限にディスプレイサイズを拡張することが可能。「150インチから300インチといったサイズが、50-60キロの重量で済む。しかも、消費電力は200ワット程度。さらに、フレキシブル性があることから、円柱や曲面のある壁にも張り付けるといった使い方ができる」(篠田氏)。

 地下街の床や天井、壁など一面にディスプレイを配置し、情報を配信することも可能になる。当然、オフィスや家庭内でも、「張り付けて設置する」という新たな提案ができるようになる。

 ブラウン管テレビは、その厚さから一部屋に一台が精一杯だった。液晶はテレビのほかにも、PCや携帯電話、白物家電などにも搭載されており、リビングを見渡せば、複数台の液晶パネルを確認することができる。そして、薄型化が進むことで、従来、窓があった場所や、壁面にもディスプレイが設置されることになる。

 そうなると、一家に一台、一人一台といった図式は当てはまらなくなる。大画面化よりも薄型化のほうが、需要拡大の起爆材料になるのだ。薄型化の追求は、メーカーにとって必然の動きといえる。
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