その他
IBMのオン・デマンド・コンピューティング 主流ITビジネスになるか
2003/01/06 21:12
週刊BCN 2003年01月06日vol.972掲載
2002年10月末、IBMのサミュエル・パルミサーノCEOは次世代の主流ITビジネスとして、ユーザー要請に即応してインターネット上に展開するビジネスプロセスと、この基盤となるITインフラを提供する「オン・デマンド・コンピューティング」を提唱した。このサービスは、電力などと同じ従量制料金だ。IBMによれば、「企業ITはこれまでのように所有し自ら運用するのではなく、IBMなどが提供するオン・デマンド・サービスの利用へシフトする」と強調する。この新たなビジョン提唱以降、米IT業界はユーザーを巻き込んで賛否両論の喧噪が高まっている。大企業ではこのサービスが主流となるとIBMが先行するだけに、すべてを同社に囲い込まれてしまうことも警戒する。(中野英嗣●取材/文)
賛否両論渦巻く米業界
■オートノミックとグリッド普及を急ぐ
IBMはオン・デマンドを実現するためのIT基盤、自己管理機能をもつオートノミック(自律的)コンピュータとグリッドネットワーク開発・普及を推進中だ。
グリッドは多数の既存サーバーやストレージをネットで結び、処理パワーの不足するサーバーから余剰サーバーへと処理能力を分散できる。
このグリッドに組み込まれるコンピュータの人的管理は不可能であり、コンピュータ自身が自動管理するための自己構成・自己修復・自己最適化・自己防衛というオートノミック機能が必須となる。
IBMは既にメインフレーム、DB2などミドルウェアにこの機能を組み込み、ユーザーが現在運用するシステムの管理などTCO(システム総保有コスト)を大幅に削減できることを実証し始めた。同社では、グリッドを基盤とするオン・デマンド・サービス利用へユーザーを移行させる前段階で、このオートノミックコンピュータを広く普及させることを狙っている。
もっとも、IBM自身もオン・デマンド方式が普及するのは04年からだと認識している。
この普及のためIBMのパルミサーノCEOは100億ドル(1兆2000億円)を投資すると発表した。既に米ペンシルバニア大学、ダイムラークライスラー、アメックスなど大組織がIBMオートノミックコンピュータを採用し始めている。
IBMで同技術を担当するアービン・ラダウスキーバーガー副社長は、「ユーザーは、eビジネス向けシステムでは連続稼働、高信頼性、災害時の回復力が最も重要であると認識している。このためオートノミック機能はパソコン、携帯端末まであらゆるITに組み込まれるようになる」と断言する。
■ユーザー、コンペティターは右往左往
オン・デマンド方式は、これまでの“メーカーはコンピュータを販売し、ユーザーはこれを所有する”というパターンを抜本的に変革してしまう。それだけに、パルミサーノCEOの提言は業界とユーザーに大きな衝撃を与えた。
米調査会社IDCのアナリスト、ロジャー・ケイ氏は、「オン・デマンド方式はコンピューティングパワーをガスや水道の栓をひねるようにして使う全く新しいアイディアだ。しかし、その前にオートノミックがもたらす利益をIBMは強力に訴える必要がある」と論評する。
ダイムラークライスラーのヨハン・ニトレCIOは、「コンピューティング環境はきわめて複雑になってしまった。この時点でIBMがオートノミックによってユーザーの困難なIT管理を単純化することはコスト削減以上にすばらしいソリューションだ」と語る。
しかし、多くの大企業CIOでは「オン・デマンドの具体像をIBMが示すまでは、これへの移行はコミットできない」との意見が大勢だ。
ヒューレット・パッカード(HP)やサン・マイクロシステムズなどコンペティターは、「大企業がITシステムすべてをアウトソーシングすることを望むのだろうか」、「オン・デマンド方式にユーザーはコスト削減以上のものを期待できるだろうか」と、IBMビジョンへの対抗をあらわに表明する。
2002年10月末、IBMのサミュエル・パルミサーノCEOは次世代の主流ITビジネスとして、ユーザー要請に即応してインターネット上に展開するビジネスプロセスと、この基盤となるITインフラを提供する「オン・デマンド・コンピューティング」を提唱した。このサービスは、電力などと同じ従量制料金だ。IBMによれば、「企業ITはこれまでのように所有し自ら運用するのではなく、IBMなどが提供するオン・デマンド・サービスの利用へシフトする」と強調する。この新たなビジョン提唱以降、米IT業界はユーザーを巻き込んで賛否両論の喧噪が高まっている。大企業ではこのサービスが主流となるとIBMが先行するだけに、すべてを同社に囲い込まれてしまうことも警戒する。(中野英嗣●取材/文)
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