その他
支援策に個性いろいろ パートナー戦略はこう変わる
2003/01/06 21:12
週刊BCN 2003年01月06日vol.972掲載
オフコンから、パソコンやUNIXなどのオープンシステムへの移行にともない、ITベンダーはパートナー各社に、「独自の強みをもち、自立してビジネスができるパートナーに」と繰り返しアピールしてきた。しかし、パートナーのマルチベンダー化が浸透した現在、単に自立を望むだけではパートナーとの良好な関係が望めない状況となっている。2003年、大手ITベンダーはどのようなパートナー支援を行っていくのか。(三浦優子●取材/文)
大手ITベンダー4社の動きを探る
■NEC、手厚いパートナー支援、商品数を充実させる富士通
NEC、富士通、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の4社にとって、中堅・中小企業市場について、「パートナー経由での販売」となっていくことは依然変わらない。しかし、パートナーに対する価値観は大きく変化。パートナー戦略はベンダーごとにかなり個性が出た、特色あるものとなってきた。
これはオープン時代のパートナー支援策が少しずつ、明確になってきたことの現れではないか。各社のパートナー戦略と位置づけを追ってみよう。
NECは、昨年12月2日付でパートナーに対する方針を明確化し、連携強化を図ることを目的に、企業向けパソコンおよびExpressサーバーの営業支援機能を一元化。中堅・中小企業向けソリューションの拡販、シェア拡大などを目指す。販売店支援策も、「ここ数年、強化してきた各事項を体系化し、NEC、パートナー、ユーザーが同じ目線でビジネスを発展できる体制とした」(細谷豊造・パートナービジネス営業事業本部長)とここ数年の集大成ともいえる、強力なものとなった。
特徴的なのは、エンドユーザーに対しNEC自身が情報提供し、「昔と異なり、ユーザー側も新しい製品情報などを知る機会も多く、パートナー側が現在の案件だけで手一杯では、顧客獲得チャンスを逃す。パートナーのビジネスを支援するためにも、当社からのエンドユーザーへのアプローチは必要」と強調する。
また、パートナーのSE(システムエンジニア)教育をNECが請け負ったり、ISO14001取得のための支援など、「パートナーの質向上は結局、NEC自身のビジネス向上につながる」との視点で、従来に比べかなり踏み込んだパートナー支援策を作り上げた。
富士通は他社以上に、「ハードとソフト一体戦略が徹底している」(長野佳久・常務理事マーケティング本部長)ことが、ここ数年のパートナービジネスにおける大きな特徴となってきた。
ソフトのラインアップとしては、「GROVIA(グロービア)シリーズ」をはじめとする自社製ソフト、さらにオービックビジネスコンサルタントの「奉行シリーズ」のような他社製ソフトについても、富士通自身が仕入れ、パートナーからエンドユーザーに販売するといったスタイルもあり、かなり充実したラインアップとなっている。
しかし、「ラインアップを増強していった結果、どのソフトを選択したらよいのかわからないといった声が出るようになった。そこで、売れ筋商品を富士通のお勧めといったアピールをすることでパートナーがソフトを販売しやすくする仕掛けが必要になってきた」と、商品数増強の次の施策が必要な段階になってきている。
カタログについても、「現在のものをもっとわかりやすく、売り方、ターゲットがきっちりわかるもの、例えば電子カルテであれば、商品Aはベッド数100床用、商品Bは300床以上用など具体化したものを、今年度中に制作したい」と、直接パートナーの販売につながる形態とする。
■日本HP、今年から本格攻勢、パートナーに自立求める日本IBM
日本HPは、新生HPとして昨年11月にスタートを切った。「はっきりいって昨年1年間はビジネス的にはマイナス。パートナーの皆さんにとっても厳しい年となってしまった」(窪田大介・執行役員パーソナルシステムズ事業統括チャネルパートナー営業統括本部統括本部長)。昨年が厳しい状況だっただけに、1月からは矢継ぎ早に新しい手を打っていく計画だ。
「まず、販売パートナー制度を今年1月に一回目の刷新を行い、さらに4月にも一部変更し、新生日本HPとして適切なパートナー制度として、極めて攻撃的にパートナーと共に市場を攻める」と、シェア拡大を目標に掲げる。
ずばり、「IAサーバー、パソコンでトップシェアをとる」とかなり強気な姿勢だ。03年の市場をUNIXサーバーからIAサーバーへの移行が進むと分析していることから、「この段階でのシェア拡大は大きな意味がある」とする。
パートナーに対しても、「旧コンパックはパートナーから価格についての相談を受けても、一切受け付けない体制だった。しかし、それではパートナーが満足してくれない。案件をすばやくキャッチアップするコミュニケーションが強固なパートナーとの関係を築く」と、パートナーの力がシェア拡大の重要な要素だとしている。
日本IBMは、「かつてのパートナーである特約店はあくまで当社の直販フォローでしかなかった。今、必要なのは自らビジネスを開拓し、案件をクローズするパートナーの存在」(橋本孝之・取締役BP&システム・PC製品事業担当)と、自立したパートナーを求める。日本IBM側の支援体制も、直販部隊が箱崎事業所(東京都中央区)に、パートナービジネス担当は六本木(同港区)と、完全に切り分け体制を作った。
新たなパートナー開拓のために、ソフト開発能力がある企業との連動も進め、すでに昨年約1000社にアプローチし、早々に100社程度の開発能力をもったパートナーも誕生する見込みだ。
その一方で、「一次店は数はいらない。現在240社あるが、これを120社程度にまで絞り込む」ことも計画。これは一次店は販売量など、ある程度の規模が必要となるものの、ソフト開発会社のように販売力は弱いが独自ソリューションをもつパートナーとの連動を活性化する狙いがあり、「二次店といっても当社のロゴを使うことが可能など、決してビジネス的にマイナスとなるものではない」と、パートナー自身が規模を追求するのか、ソリューション力を追求するのか、方針をはっきりすることを求めたものだ。
システム開発のために、ハードは晴海(東京都中央区)に、ソフトは渋谷(同渋谷区)に検証施設をオープン。マルチベンダー対応でシステム検証ができる環境を用意し、IBMの姿勢をパートナーにアピールする。
オフコンから、パソコンやUNIXなどのオープンシステムへの移行にともない、ITベンダーはパートナー各社に、「独自の強みをもち、自立してビジネスができるパートナーに」と繰り返しアピールしてきた。しかし、パートナーのマルチベンダー化が浸透した現在、単に自立を望むだけではパートナーとの良好な関係が望めない状況となっている。2003年、大手ITベンダーはどのようなパートナー支援を行っていくのか。(三浦優子●取材/文)
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