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新春特別レポート(下) IT化でコスト削減進む 米自治体の調達業務 行政サービスにとって不可欠の存在へ
2003/01/13 15:00
週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載
米国における行政の大きな業務の1つである調達業務の効率化について、IT化は非常に有効である。毎年連邦政府は42億ドル(5000億円)以上を調達に対する支払いとして支出している。当然ながらGtoB(行政対民間のオンライン取引)は、これらの金額規模に並ぶだけの市場を潜在的に備えていることになる。調査会社フォレスター・リサーチによればGtoBの潜在能力は高く、2006年には6020億ドル(72兆2000億円)を超えると予測されている。また、ガートナーグループでは、これら調達に関わる経費は、00年の15億ドルから05年には62億ドルへと大幅に増大すると見ている。 (田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
■電子署名法を制定したニューヨーク州
米国の行政機関が行っている調達業務の効率化は非常に重要な課題であり、実現すれば莫大なコストの削減になる。
このため、各自治体はそれぞれ独自の方法で調達業務の簡略化と迅速化を推し進めると共に、人的資源の削減や支出の低減、そして不正や人為的ミスの排除を実現するべくIT化に注力している。
また調達に関与している民間企業のリストを掲載している民間サイトなどもあり、行政が進める路線に周辺の民間企業も歩調を合わせる形となっている。 eコマースを一層活発にするには、電子署名やその法的有効性の確立は重要である。
ニューヨーク州ではインターネットの商用利用には非常に積極的で、これまでも「シリコン・アレー」と言う名前を一般に認知させるなどの政策を行ってきた。とくに電子署名の法的有効性については、パタキ知事が99年9月に承認を行った後、わずか半年後の00年3月に法案を制定した。
ニューヨーク州では、より一層電子商取引が行われ、その上で企業からの税収が増加することを期待している。
■ウェブサービスが地域格差是正へ
IT化の早かった自治体は、大手IT企業との提携により、それを実現したところが多い。IBMを筆頭にデルコンピュータやヒューレット・パッカードといった大手企業と密接な協力関係を築き、早くからIT化に取り組んできた。
一方、大手企業のサポートがない地域ではIT化も遅れがちで、技術面でのサポートもなく取り残され、問題となっていた。
しかし昨年から急速に普及を始めた各種のウェブサービス技術はその利便性から、これらの「地域格差」を一気に是正することが可能なのではないかとして、大きな期待が寄せられている。
■プライバシー保護も課題
個人情報の保護は、IT化において大きな問題点であり、情報の漏洩は犯罪の温床ともなりかねない。しかし近年、高度化する一方のセキュリティ技術は、導入にも維持にも莫大なコストが必要である。
ハイテク調査会社IDCは、セキュリティ関連市場は05年までに140億ドル(1兆6800億円)以上になると予測しており、行政としてもむやみな導入は困難だ。この点でネブラスカ州は単純な解決策を採っている。
ここではプライバシー保護とセキュリティのために、行政サービス関係のネット利用には別途登録が必要だ。登録はオンラインで可能だが、その後書類は郵送されて来る。ユーザーは書類に記入した上で返送し、その後アクセスが可能になるというものだ。 高度なIT技術のみに頼らずとも、プライバシー保護とセキュリティを達成できる好例である。
■作業効率化に取り組むジョージア州
システムの規模が大きくなると、外部委託能力の水準が問題として浮上してくる。とくに地方都市では、土木や建築などの受発注は経験が長いが、IT関連分野に関しては経験者や熟知した人材が自治体内に不足しがちだ。
その結果、コストが増加する傾向があることや、受託企業の不正が発覚するなど問題が表面化しつつある。
ジョージア州ではこの問題の対応策として、個別に2人ずつのスタッフを用意し、それぞれプロジェクト・マネージャーとマーケティング・マネージャーとして、各マネージャーが割り当てられた業務を遂行するシステムを採用している。 専門家の配置と、明確な役割の分担により、作業の効率化と問題点の早期解消を図っている。
■コスト削減は双方にメリット
米国行政のIT化の一番の特徴は、徹底したコスト削減と住民サービスの姿勢である。コスト削減とサービスの充実は一見相反するように見えるが、住民側の使い勝手が良ければ、その分行政側の作業が減るのは道理であり、しかもオンラインであれば営業時間を気にする必要はなく、双方にとってメリットが大きい。
ITを使って行政サービスが普及すれば、ニューヨークやサンフランシスコのような地価が高い地域に、敢えて窓口を設置する必要もなくなるかもしれない。
カリフォルニア州サンタモニカ市では、サイト公開後、職員を増加させずに、しかもサービス項目を増加したが、かえって窓口来訪者の削減に成功した。IT化はいまや行政と住民相互にとって必須であり、更なるサービスの充実は日々要望が高まるばかりだ。今後も行政サービスのIT化はますます加速していくだろう。
米国における行政の大きな業務の1つである調達業務の効率化について、IT化は非常に有効である。毎年連邦政府は42億ドル(5000億円)以上を調達に対する支払いとして支出している。当然ながらGtoB(行政対民間のオンライン取引)は、これらの金額規模に並ぶだけの市場を潜在的に備えていることになる。調査会社フォレスター・リサーチによればGtoBの潜在能力は高く、2006年には6020億ドル(72兆2000億円)を超えると予測されている。また、ガートナーグループでは、これら調達に関わる経費は、00年の15億ドルから05年には62億ドルへと大幅に増大すると見ている。 (田中秀憲(ジャーナリスト)●取材/文)
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