その他
富士通 失敗事例を題材に「PM研修会」開始
2006/09/25 21:10
週刊BCN 2006年09月25日vol.1155掲載
富士通(黒川博昭社長)は、過去に自社の大規模プロジェクトで赤字が発生した失敗事例を題材にした「PM(プロジェクト・マネジメント)研修会」を開始した。赤字プロジェクトを招く原因となった契約の曖昧さ、要件定義やスケジュール管理の詳細計画の不備などを分析し、ここから得た「教訓」を本体の営業担当者やSEを対象に教育を本格化する。同社は昨年4月、不要な赤字プロジェクトをなくすことを目的に社長直轄の部署を立ち上げ、1億円以上(100人月以上)のプロジェクトの契約内容を精査して、赤字プロジェクトの大幅減少に成果をあげた。だが、組織やツールなど仕組みだけを整備しても、本当の意味で撲滅できないと判断。より実践的な事例を基に「現場力」を身につけることにした。こうした研修会は、協力会社にも適用していく方針だ。
「現場力」磨き 赤字プロジェクト撲滅
100人月以上の案件で徹底
富士通は、SI事業で赤字プロジェクトの発生により、引当分を含め2003年度(04年3月期)に600億円(70件)、04年度に400億円(152件)の特別損失を計上した。同社のSI事業における商談件数は、04年度で1万7000件。商談総件数の4%しかない1億円以上のプロジェクトで売上高構成比の56%を占めているが、そこで巨額損失を招いていた。
これを重く見た黒川社長は昨年4月、1億円以上の商談発生時から各プロジェクトの遂行状況を個別にリスク管理、教育する「SIアシュアランス本部」を設置。この制度の開始により05年度に100億円、06年度に50億円程度(見込み額)に激減させることに成功している。
こうした活動は、同本部の前身となる「SIプロフェッショナル室」が01年4月から実施してきた。しかし、PM担当者に対して、「PMBOK(プロジェクト管理手法)」などを教育してきたが、知識偏重の傾向があり、赤字プロジェクトに歯止めをかける権限もなかった。そこで、SIアシュアランス本部を設置するとともに、今年6月、新たに「PMプロフェッショナル推進室」を設置し、より実践的なPM教育を行うことにした。
「PM研修会」の「STEP1」としては、5-6月に計10回、本体の営業担当者やPM担当者であるSE幹部ら計2000人に対し、東京・大田区の「蒲田区民センター」を会場に講習会を実施。契約や要件定義、仕様が曖昧のまま先送りして開発工程に入った“生きた”赤字プロジェクトを題材に問題点をあぶり出し、考える場を提供した。失敗に陥る理由としては、要件定義や仕様作成を先送りし、大量の人員を投入して時間や金で解決しようとしたり、希望的な見積り作成、密室での商談などがあげられている。
「STEP2」では、「基礎研修」として、同じく赤字プロジェクトを題材に扱い、少人数で原因分析や、なすべき対応策などを議論する。現在は「STEP3」に移行しており、「応用研修」を実施中だ。ここでは、4チームが各3人程度に分かれ、PM担当のベテランが指導する形をとる。現在進行中のプロジェクトを使って、現場と同時進行で原因分析や対応策を検討し、実践力を磨いている。
「PM研修会では、赤字プロジェクトに陥る典型例を題材に取り上げた。PMBOKなどの知識を得ることは重要だが、各プロジェクトは千差万別で、その知識だけで解決できるほど単純ではない」と、梅村良・常務理事SIアシュアランス本部本部長は、研修会開催の理由を説明する。
利益追求の意識づけを重視
赤字プロジェクトの撲滅を図る富士通では、これまで、契約からスケジュール管理に至る各場面をチェックするツール類やスキームを整備してきた。SIアシュアランス本部が赤字プロジェクトを防ぐべくコントロールもできるようになった。だが、「ツールでチェックして満足して終わる“杓子定規”な担当者が出ないとも限らない」(梅村良・SIアシュアランス本部長)と、各プロジェクトの事情に応じ的確に判断できる「現場力」を養う必要があると、徹底した施策を実行している。
同社では、SI事業のシステム開発で半数を担う協力会社に対しても、同じような研修会を実施することを示唆している。特に、関係の深い「プレミアムパートナー」の担当者を対象に教育するほか、共同で役割分担を明確化する方法論などを検討することも視野に入れている。
同本部で損益管理を厳格化することで、新規顧客の獲得に二の足を踏む営業担当者が出ることも懸念されるが、梅村本部長は「商談や受注が減ることはない。今年度はむしろ増えている。営業担当者などに『何としても案件をとる』という意識から『会社として利益を追求する』へと変わることが、最大のミッションだ」と、不健全な受注を減らすことで、利益の最大化を図れるとみている。
富士通(黒川博昭社長)は、過去に自社の大規模プロジェクトで赤字が発生した失敗事例を題材にした「PM(プロジェクト・マネジメント)研修会」を開始した。赤字プロジェクトを招く原因となった契約の曖昧さ、要件定義やスケジュール管理の詳細計画の不備などを分析し、ここから得た「教訓」を本体の営業担当者やSEを対象に教育を本格化する。同社は昨年4月、不要な赤字プロジェクトをなくすことを目的に社長直轄の部署を立ち上げ、1億円以上(100人月以上)のプロジェクトの契約内容を精査して、赤字プロジェクトの大幅減少に成果をあげた。だが、組織やツールなど仕組みだけを整備しても、本当の意味で撲滅できないと判断。より実践的な事例を基に「現場力」を身につけることにした。こうした研修会は、協力会社にも適用していく方針だ。
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