プリンタメーカーのOKIデータ(杉本晴重社長CEO)とシュレッダー(文書細断機)最大手の明光商会(藤島暢夫社長)は2009年1月中にも、両社の製品を融合させて紙文書の発生から廃棄までをICカードなどで一元管理するソリューションの提供を開始する。LED(発光ダイオード)プリンタやLEDで実現できる地紋印刷、シュレッダーとスキャナの合体機などを連携させ、機密文書の情報漏えい防止を強化する金融機関や一般オフィスなどへ拡販する計画だ。OKIデータは、試作機でプリセールスを開始。手応えを感じていることから販売パートナー経由の販促も順次行う。(谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文)
09年1月にも提供開始へ
■文書廃棄の履歴が明確に 同ソリューションは「Paper Document Lifecycle Management(PDLM)」という名称で、08年夏頃から両社の主力製品などを融合した試作機として開発を進めていた。この仕組みは、まずOKIデータのLEDプリンタで追跡情報の背景地紋を透かし印刷できる「ProtecPaperプリンティングソリューション」を利用。誰がプリントしたかなどのIDを発生時に紙文書へ記す。廃棄前には、明光商会のスキャナ付き「ICカード対応個人認証シュレッダー」に印刷者IDをかざし、透かしの入った紙文書をスキャンすると、廃棄可能な文書かを判断しシュレッダーする。同ソリューションを利用すれば「誰がいつ何を廃棄したかが明確になる」(OKIデータの佐藤泰典・ソリューション推進課長)と、LEDプリンタの特性を生かした特定用途向け提案として新市場を開拓できるとみている。
■紙文書の情報漏えいを防ぐ 金融庁の「個人情報保護に関するガイドライン」は、金融分野における個人情報取扱事業者に紙文書などの消去・廃棄状況の記録や分析ができるようにすることを求めている。また、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)調査によると、情報漏えい事故の約4割は紙文書から発生している。佐藤課長は「危険な紙が社内に氾濫している」とみており、その対策として入退室や書類の書庫などにICカード機能を付けてファシリティ全体で紙文書の情報漏えいを防ぐこともできるという。
同ソリューションは、こうした厳重な体制を構築するうえで壁となっている課題を解決できる可能性がある。紙文書の漏えいを防ぐために印刷禁止にしてしまい、結果的に業務効率の低下を招くこともない。ICタグを紙文書に貼付してログを取る方法はタグが高価で手間も増えるが、透かし印刷ならこれも解決できる。紙文書の外部流出や機密文書の誤廃棄などを防ぐシステムを構築するにはコスト増大が見込まれる。そのため二の足を踏んでいた金融機関や上場企業などから引き合いがありそうだ。
同社は試作機段階でプリセールスを開始し手応えを感じていることから、09年1月中に販売を開始する。また、サーバーなどの基幹システムとの連動が必要なため、これ以降にコンピュータ系販社やオフィス家具とITを一緒に販売するパートナーを介した販売も進める計画だ。
OKIデータは2008年4月、「特定用途」ごとに製品、販売、パートナーを組み合わせビジネスモデルを構築する「ソリューション・マネージャー」を配置した。一般オフィスのプリンタ需要が低迷するなかで、「特定用途」の新市場を開拓するのが狙いだ。明光商会と構築した今回のソリューションは、銀行など金融機関向けのプリンタ販売で影響力の高いキヤノンなどに対抗する仕組み。 金融市場では銀行の窓販などに同社プリンタが入っていたが、バックオフィスなど「勘定系」に関連する業務領域では後塵を拝していた。この仕組みを利用することで、同社や同社のパートナーは、「強いソリューション」を得たことになる。競合市場へ食い込める可能性が出てきたのだ。舘守.・執行役員国内営業本部長は「LEDプリンタだから実現できる、競合他社にない用途提案ができる仕組みを数多く作り上げる」と、さらに「特定用途」向けソリューションを構築し、SIerなどが販売できるようにしていく方針だ。 OKIデータは10年度(11年3月期)までに07年度比で約50%増となる売上高350億円を達成目標に掲げている。今回の明光商会とのソリューションが、高いシェアを誇るPOP・DTPに次ぐ第3、第4の柱へと成長するかどうかは、コンピュータ系販社にとって売りやすい商品にできるか否かがカギを握っている。 |