ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が推進する異なるメーカーのプリンタを相互接続する標準規格「BMLinkS」。これを策定するプロジェクトが、新たな標準仕様を発表した。この標準仕様は、異なるメーカーのデジタル複合機(MFP)でも、共通のQRコードを付与して紙文書による情報漏えいを防止する「複写防止」を可能にしている。今回の仕様は、MFPを販売するSIerにメリットが大きい。だが、依然としてプロジェクトの認知度は低く、BMLinkSで策定した各仕様も普及の途上にある。

「BMLinkS情報マーキング標準仕様」を中心で開発したリコーの丹羽雄一氏(右)とキヤノンの高橋裕治氏
ユーザー企業は規模が大きくなるほど、MFPを特定のプリンタメーカー製だけで整備する「1社購入」を避ける傾向にある。したがって、リコーやキヤノン、富士ゼロックスなどのMFPが散在する「マルチベンダー環境」が形成されることになる。MFPの導入を提案するSIerは、まずこの点を押さえておく必要がある。
各プリンタメーカーのMFPには「地紋印刷機能」が搭載されている。例えばA社同士のMFPならば、機密文書などに「コピー禁止」の情報を刷り込んだ地紋を読み取り、その文書を再度コピーすることができない。だが、地紋印刷された文書も、異なるメーカーのB社のMFPで印刷すると複製できてしまう。
この「紙文書の困りごと」を解決したのが「BMLinkS情報マーキング標準仕様」だ。今後、各メーカーが投入するMFPの「BMLinkS対応」新製品のデバイスには、この機能が標準搭載される予定。現行の「BMLinkS対応/MFP」でも、デバイスにこれを搭載すれば使用することができる。
今回の標準仕様は、紙文書に2次元バーコード(QRコード)を付与し、どのメーカーのMFPでもマークを認識して「複写防止」を行う。また、複写できるが「誰がいつ複写した」かをトレースする機能も盛り込んだ。この両モードを利用すれば、企業の要求に応じた紙文書の情報漏えい策を打つことができる。
この標準仕様を開発した一人、リコーの丹羽雄一・MFP事業部シニアスペシャリストは「QRコードという紙上に表出する仕組みではあるが、マルチベンダー環境での利用は多く、SIerにとって有益な仕組みだ」と語る。また、同じメンバーのキヤノンの高橋裕治・映像事務機DS開発センター主幹研究員は「これを利用して文書管理やワークフローなどの製品を開発するソフトウェアベンダー(ISV)に働きかけ、協力を促す」と、いままでにない積極的な普及・促進活動を展開する。
しかし、「BMLinkS」の存在を知るSIerや、具体的にこれを売りに営業するベンダーは極めて少ない。プリンターメーカー側は、依然として中・大規模案件は「1社丸抱え」する営業スタンスで、関連するチャネル・パートナーにも「BMLinkS」の存在を伝えないことが多い。
国内企業の多くでは、プリンタ以外のIT機器・システムはマルチベンダー化している。また、一気にシステム入れ替えをするケースは減り、既存IT資産を有効活用するようになった。「BMLinkS」は7期目を迎え、さらなる要求に応えるべく開発を行う。このままでは、時間と労力を無駄にしながら「使われないツール」を開発することになってしまう。(谷畑良胤)

「BMLinkS情報マーキング標準仕様」を搭載すると、紙文書に100円玉より小さいQRコードが印刷され「複写防止」ができる