金融フロンティア領域での競争が激しさを増している。IT投資が活発なフロントエンドシステムでシェア20%近くをもつシンプレクス・ホールディングス(金子英樹社長)がクラウド型の大型サービス商材を投入するなど、新商品やサービスの開発競争が熱を帯びている。一方で、国内の金融分野におけるIT投資はここ数年伸び悩んでいることから、持続的な成長に向けた同業者同士の協業や再編、海外市場へのビジネス進出が欠かせない状況だ。
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シンプレクス・ホールディングス 金子英樹社長 |
総合証券やネット証券、ネット銀行、外国為替証拠金取引(FX)事業者などが活用するITシステムは、最先端の技術をいち早く導入することから、“金融フロンティア”と呼ばれている。IT投資が活発な有望市場である。クラウド型の金融商品取引システム「Voyager Trading Cloud(ボイジャー・トレーディング・クラウド)」をこの6月に投入したシンプレクスグループは、グループ戦略や海外進出を意欲的に進めている。昨年は、バーチャレクス・コンサルティングを連結子会社化するとともに、香港に営業拠点を開設。シンプレクス・ホールディングスの金子英樹社長は、「グループ経営の推し進めると同時に、グローバル市場への進出に向けた準備にも取り組む」と意気込みを語る。
しかし、国内に限ってみれば、今後の伸びしろはさほど大きくなく、同業者間の協業や再編、海外市場への進出が成長に欠かせないくなっている。シンプレクス・ホールディングスの今期(2012年3月期)の連結売上高は前年度比16.8%増の175億円、11期連続増収の見込み。Voyager Trading Cloudはすでに、三田証券が第一号ユーザーに決まっており、最終的には同サービスで、金融商品取り引きの上位20社のうち15社への納入を目指すと強気だ。
とはいえ、グローバルでみれば、株式取引では仏フィデッサ、デリバティブ取引では米カリプソなどの個別分野に強いパッケージベンダーと競合関係にあり、国内ではこれらパッケージ製品を担ぐ大手国内SIerと競合することが多い。これまでのシンプレクスグループは、商材開発からSI・運用保守まで垂直型でビジネスを展開してきたが、「国内外でのSIerとの協業も視野に入れる」(金子社長)と、SIや運用領域での協業を推進する姿勢を示す。とりわけ海外市場では地場に開発・運用部隊を持つSIerとの協業が不可欠。
成長を持続するためには、国内市場が飽和してしまう前に、協業や再編、海外進出の体制をつくる必要性に迫られている。(安藤章司)