サイバー脅威の増大・多様化によって、ユーザー企業のサーバーやネットワークを不正アクセスから保護するIPS(侵入防止システム)の需要が高まりつつある。セキュアソフト(姜昇旭社長)は、IPSベンダーとして韓国のウィンステクネット社と共同開発し10Gbps対応の最上位モデルを展開しており、通信事業者やサービスプロバイダを中心とするハイエンド市場の開拓に取り組んでいる。同社は、年内に最上位モデルの新機種を発売し、成長に向けて攻勢を強める構えだ。(取材・文/ゼンフ ミシャ)
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セキュアソフト 営業本部 篠田律 執行役員 |
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ウィンステクネット 海外事業部 リュウ・ジョンホ 部長 |
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ウィンステクネット 研究開発本部 ジョ・ハックス 常務理事 |
セキュアソフトは、「SecureSoft Sniper IPS」ブランドで、高い処理性能を図るIPS製品を提供している。セキュアソフトと共同開発している開発元は韓国ソウルに本社を置くウィンステクネット社で、同社が主なターゲット市場とするのは、キャリア/通信事業者のほか、インターネットサービスプロバイダ(ISP)やアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)など、IPS製品に高性能を求める企業だ。
ブランド浸透でシェアを拡大 社内システムへの不正アクセスを検知し、遮断するIPSは大手企業を中心に、導入が進んでいる。このところ、特定の企業や組織を狙う「標的型攻撃」に代表されるサイバー攻撃の増大・多様化によって、ファイアウォールの後部に設置し、ファイアウォールを通過した通信を検知する機能をもつIPSの需要が高まっている。需要の高まりを受けて、セキュアソフトは事業の拡大を図り、ハイエンド市場の開拓に力を注いでいる。2010年12月、「SecureSoft Sniper IPS」の最上位モデルとして10Gbps対応機種「10G」を投入し、製品力を高めてきた。
同社は、富士通グループや日立グループ、キヤノンITソリューションズなどをIPSの販売店として抱えている。IPS製品を大手メーカーにOEM供給しており、供給先企業の評価も良好な状況だという。さらに、一昨年の年末の「10G」の投入に合わせて、2011年1月にNECと販売代理店の契約を結んだ。このように、他社よりすぐれた商品を元に販売体制およびサポート体制の強化を行い、シェアを伸ばしている。国内のIPS市場では、海外ベンダーがシェアを競っている。セキュアソフトで営業本部長を務める篠田律執行役員は、「当社はここ数年、ブランドの浸透とともにシェアを大きく伸ばし、市場での存在感を大きく高めてきた」と自信をみせる。
新規ビジネスで飛躍へ セキュアソフトが強みとするのは、日本のネットワークの特徴に合わせてローカライズすることによって、価格を抑えながら高い処理性能を実現するという点にある。「カタログでのスペックと、実環境におけるスペックとの差を最小化し、すぐれたパフォーマンスを図っている」(ウィンステクネット海外事業部のリュウ・ジョンホ部長)とアピールする。同社は、今年中に最上位モデルの新機種の発売を予定している。さらに、通信データの急増でネットワーク上のトラフィックが増大することを受け、「2014年をめどに、100Gbps対応のモデルを出す」(ウィンステクネット研究開発本部のジョ・ハックス常務理事)ことを目指して、開発を推進しているところだ。
セキュアソフトは製品ポートフォリオの拡大に加え、販売体制およびサポート体制の強化に取り組んでいる。篠田執行役員は、「クラウドを含め、大手メーカーと新しいビジネスを立ち上げるために、準備を進めている」と語る。担当者と定期的にミーティングを開いており、製品化の段階にきているという。「ビジネスの拡大を目指し、年内をめどに新規事業をかたちにし更なる飛躍をしたい」(同)と、意気込みを示している。