テニス・バドミントンのラケット専門店、ラケットショップフジは、ファイルメーカーのデータベース(DB)ソフト「FileMaker Pro」とDB管理ソフト「FileMaker Server」を導入して、店舗スタッフの業務効率化を果たした。これにより、店舗スタッフの接客力を高めるとともに、販売チャンスを逃さないようにするために各店舗の在庫状況を可視化した。また、仕入先メーカーとのシステム連携によって迅速な発注も実現している。
ラケットショップフジ
会社概要:テニス・バドミントンのラケット専門店として1972年にJR国分寺駅近くで創業。当時、地域にラケット専門店がなかったことから注目を集め、今では東京・神奈川・埼玉・静岡に12店舗を構えている。
プロダクト提供会社:クラスエーワン
プロダクト名:「FileMaker Pro」「FileMaker Server」
「FileMaker Pro」と「FileMaker Server」を導入したシステムの概要
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ラケットショップフジ 小堀泰夫・仕入部長 |
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クラスエーワン 清水実氏 |
ラケットショップフジが「FileMaker Pro」と「FileMaker Server」の導入に踏み切ったのは、2007年3月。その経緯について小堀泰夫・仕入部長は、「店舗のスタッフには、お客様の顔を見て接客する本来の業務をきちんとこなしてもらいたいので、それを支援するためのシステムを導入したいと考えた」と振り返る。同社はテニスとバドミントンのラケット専門店であり、総合スポーツ店や大型ホームセンターなどとの差異化を図るにはプロショップとしての接客が決め手になるとの判断からだ。
専門店の店舗スタッフには、商品に関する豊富な専門知識が要求される。初めてラケットを購入するお客様にわかりやすく説明するなど、来店者の購入を促してリピーターとして囲い込むためのスキルも欠かせない。来店者のレベルに合わせていかに接客するかが店舗スタッフの腕の見せ所となる。
しかし、実際には理想通りの店舗運営ができていなかった。「FileMaker Pro」と「FileMaker Server」を導入する前のラケットショップフジでは、本部が各店舗の売上高や在庫状況などを把握するために、店長クラスに定期的に報告書の作成を求めていた。会計ソフトなどの業務ソフトを導入していたものの、報告書となると店長が一から作成しなければならない。問題は、店長がデスクワークばかりに時間を取られてしまっていたということだ。小堀部長は言う。「当然ながら、店長クラスは数字を気にしなければならない。しかし、本当に売り上げを伸ばすためには、入りやすい店、来店して居心地がいい店にすることが大切。店舗のスタッフが接客に専念でき、なおかつ本部でデータを分析できるようにしたいと考えた」。その考えに基づいて、「FileMaker」を導入することを決断したのだ。
システム構築を担当したのは、中堅・中小企業(SMB)向けにDBソフトの販売に加えてIT化のコンサルティングを手がけるクラスエーワンだ。システム事業部の清水実氏は、「会計ソフトで売り上げなどを管理するよりも、さまざまなデータを管理できるDBソフトを導入するのが最適だと考えた。手軽にデータを分析できるということから、ファイルメーカーの製品を提案した」と経緯を語る。ただ、DBソフトを導入しても、それだけで経営に役立つデータ分析ができるとは限らない。07年3月に依頼を受けてから、まずはシステムやネットワークの環境を把握した。また、「すべてのシステムをまとめて構築するよりも、ミニマムスタートで構築していったほうがDBソフトを使いこなすうえでも好都合だと思った」(清水氏)という。07年中に本部と各店舗のシステムをリプレースしたほか、商品マスタを整備。08年から、本部と各店舗のシステム連携に着手した。10年には、すべての店舗のデータ連動が完了。ラケットショップフジが望むシステム環境が整った。
システムの改善によって、ラケットショップフジの本部では、全店舗の販売状況を把握しながら在庫過多の店舗から品薄の店舗に商品を移すなど、販売機会を逃さないアクションを起こすことができるようになった。店舗では、店長を含めてスタッフのデスクワークが大幅に減り、接客に専念できるようになった。さらに、システム改善によって効果が出てきたのは、今年5月に実現した仕入先メーカーのEDI(電子商取引)システムとの連携だ。小堀部長は、「在庫がなくなった際、迅速に仕入れることができて販売損失の減少につながっている」と顔をほころばせる。(佐相彰彦)
3つのpoint
・店舗スタッフが接客に専念できる
・本部で迅速なデータ分析が可能に
・仕入先のEDIと連携して円滑に発注