その他
中国・大連のIT産業 対日ビジネスは新たな段階へ 高付加価値ビジネス、協業モデルづくりに動く
2016/11/24 14:52
週刊BCN 2016年11月21日vol.1654掲載
大連のIT企業が、新たな対日ビジネスのあり方を模索している。近年、中国の経済成長の減速や為替変動、中国国内の人件費高騰などを背景に、大連IT企業は、対日オフショア開発やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)といった従来型ビジネスを転換する必要に迫られている。そうした状況のなか、単純なBPO事業から脱却し、新技術の開発やソリューションの提供、さらにはより強固な日中連携を目指したビジネスモデルを構築する動きがみえ始めた。(前田幸慧)
大連は、中国の他地域や他の国々と比較しても有力なオフショア、BPO拠点として、その役割を担ってきた。一方で、近年の経済環境の変化から従来型のコストメリットを重視したビジネスに限界がみえ始め、大連における対日ビジネスにも暗雲の兆しがみえつつある。「アウトソーシング産業において優位性を保ってきた大連が今後も優位性を維持するためには、新たな価値を創り出す必要がある」(張暁鴎・東軟集団高級副総裁兼首席財務官)というのが、対日ビジネスで成長してきた現地IT企業の共通の見解だ。
現在、大連に拠点を置くIT企業では、主力としていたアウトソーシングビジネスを転換する動きが活発化している。各社が新たな価値創造のために取り組んでいるのが、主にコンサルティングへの参入、ソリューションの提供、新技術の開発だ。
例えば、パクテラ・テクノロジー・ジャパンでは昨年、コンサルティング会社を設立し、上流工程の支援に乗り出した。また、デジタルマーケティングやテスティングなど5つのソリューションをメニュー化し、特定業種に対してより高付加価値化されたサービスを提供する。「こうした新しい仕事を大連のアウトソーシング部隊と連携して行っていく。今まではアウトソーシング拠点としての大連だったが、これからは新技術のコントロールタワーとしての大連になる」(宮下和浩・パクテラ・テクノロジー・ジャパン社長)ことを目指している。ほかにも、アクセンチュアや億達信息技術(YIDATEC)では、クラウドやビッグデータを活用した新技術の開発に積極的だ。「エンドユーザーがメリットを感じられるようなビジネスモデルに転換する」(馬興吾・大中華区アクセンチュア運営デリバリーセンター董事総経理)としている。
こうした新たな取り組みを各社が推進しているものの、対日アウトソーシング事業自体を悲観する声はあまり聞こえてこない。「大連に対するオフショアニーズ、BPOニーズはまだまだ多い」(劉軍・大連華信計算機技術董事長)、「アウトソーシング事業は現在も2ケタ成長を続けている」(パクテラの宮下社長)など、依然としてオフショア、BPOに対する需要は存在している。中国からの撤退や東南アジアなどへの移転が進んでいるといわれるが、大連高新区の見方としては、そうした状況があるのは認める一方、「中国内陸部にある製造業が移転しているだけで、大連に進出する企業の規模自体は拡大している。他の都市で事業を縮小したからこそ、大連に事業を集中する傾向がある」(靳国衛・大連高新区主任)とのこと。重要なのは、従来とは異なる、付加価値を伴ったビジネスが求められているということだ。
日中のIT企業を対象として、10月27日に開催した「日中連携懇談会」には、定員400名に対し500名を超える申し込みがあったといい、会場は満席だった。想定以上の参加者を集めたことは、それだけ日中両国のIT企業が今後のビジネスのあり方を模索していることを示唆しているといえる。同懇談会で登壇した大連華信の王悦社長は、「(対日ビジネスを手がける中国企業は)一方的に日本から受注するのではなく、共同で中国・海外市場を開拓する必要がある」と、日中連携を発展させることの重要性を説き、同社とニフティのクラウドビジネスにおける協業などを例示した。大連IT企業の従来型ビジネスモデルの転換と日中企業の協業のあり方が、今後の両国ビジネのカギを握っている。
大連のIT企業が、新たな対日ビジネスのあり方を模索している。近年、中国の経済成長の減速や為替変動、中国国内の人件費高騰などを背景に、大連IT企業は、対日オフショア開発やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)といった従来型ビジネスを転換する必要に迫られている。そうした状況のなか、単純なBPO事業から脱却し、新技術の開発やソリューションの提供、さらにはより強固な日中連携を目指したビジネスモデルを構築する動きがみえ始めた。(前田幸慧)
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