ミロク情報サービス(MJS、是枝周樹社長)は、中小企業向けのクラウドプラットフォーム「bizsky」を今春に本格始動させる。会計事務所専用システム、一般企業向け財務会計システムの老舗ベンダーとして長年市場で存在感を示してきた同社が、既存ビジネスの成熟化を踏まえ、新たな成長領域を開拓すべく立ち上げた新規ビジネスだ。2016年度(17年3月期)の売上高予測260億円に対して、20年度売上高500億円という意欲的な目標を掲げる同社にとって、目標実現に向けた起爆剤となるか――。(本多和幸)

独自コンテンツとして新サービスを立ち上げ

 bizskyは、「中小企業の経営・業務改善を支援する日本最大のビジネス・クラウド・プラットフォームを目指す」というコンセプトの下に立ち上がった。具体的には、クラウド上でさまざまなアプリケーションやサービスを提供するための共通認証、決済、APIを備えた技術基盤だ。MJSグループの独自コンテンツに加え、サードパーティのクラウド商材も利用できるマーケットプレイスとしての機能を備え、プラットフォーム上のコンテンツが相互にAPI連携できる仕組みも担保する方針だ。ユーザーがさまざまなアプリケーションをニーズに合わせて選択し、それらをデータ連携が可能な一つのソリューションとして活用できるようにしたいという。
 

 MJSは、bizsky上で提供する同社の独自コンテンツとして、中小企業の業務効率化やコスト削減を支援するクラウドサービス群の新ブランド「楽たす」シリーズを立ち上げた。bizskyそのものの本格オープンは17年3月の予定だが、楽たすシリーズのサービスとしては、振込代行の「楽たす振込」「楽たす給与振込」という二つのサービスをすでに先行してリリースしている。振込業務の負荷と振込手数料を削減するサービスで、両サービスを合わせて17年9月をめどに8000社のユーザー獲得を目標としている。楽たすシリーズのロードマップとしては、請求書発行・入金消し込み機能、給与明細配信機能、資金繰り管理機能などのサービスも拡充していく計画で、bizskyの本格オープン時までには、主要機能をローンチしたい考えだ。

 

森岡智直
bizsky事業部
bizskyビジネス推進
グループ長

 注目したいのは、MJSがbizsky上の独自コンテンツを整備するにあたって、わざわざ投資をして新しい事業ブランドを立ち上げた点だ。同社製品開発・サポート本部の森岡智直・bizsky事業部bizskyビジネス推進グループ長はその背景について、次のように説明する。

 「楽たす振込、楽たす給与振込により、企業の出金データがみえてくる。さらに、将来的に提供予定の電子請求書発行機能などで、入金情報もみえるようになる。キャッシュイン・アウトの動きを可視化して、これを銀行口座のデータと連携したり会計システムと連動したりすることで、資金管理を容易にするサービスも構築できるようになる。こうしたデータを網羅的に活用して金融機関などとも連携し、FinTech分野の新しいサービスを展開していきたい」。

 bizskyの独自コンテンツとしては、MJSの既存資産をそのまま転用するかたちでクラウド財務会計システムから提供し始めるという選択肢もありそうなものだが、将来的にFinTechサービスを大きく成長させるために必要なピースとして、ユーザーの入出金情報を抑えるサービスに着目したということのようだ。また、MJSにとっては、新しい領域の商材を出すことで単純に新規顧客を獲得しやすくなるわけで、bizsky全体の顧客基盤拡大を後押しする効果も期待できるといえよう。

サードパーティは数より質を重視

岩田 悟
bizsky事業部長

 マーケットプレイス上でコンテンツを提供するサードパーティベンダーについては、当面は数より質を重視してパートナー契約を結んでいく方針。同本部の岩田悟・bizsky事業部長は、「パートナー契約にあたっては、いくつかの基準を設けようとは考えている。ただ、MJSの既存製品、もしくはマーケットプレイス上ですでに提供している製品と競合する製品は認めないというつもりはない。同種のサービスでも、ユーザーが自分に合ったものを選択できるようにしたい」と話す。

 プラットフォームやマーケットプレイスとしての成功という観点でみれば、ビジネスの規模が重要であり、参加するサードパーティの数も当然増やしていく必要はあるだろう。ただし、SaaSのマーケットプレイスはこれまでも多数生まれているが、なかなか成功といえるような結果を残せていない。それでも岩田事業部長は、「プラットフォーム上のコンテンツは、当社製、サードパーティ製を問わず、基本的にはAPI連携し連携ソリューションとして組み合わせて使えるようにする。これは既存のマーケットプレイスに対する一つの差異化ポイントになるはず」とアピールする。

 是枝周樹社長は、「17年度中に10万会員を獲得したい」と檄を飛ばしている。そのほとんどは自社コンテンツである楽たすシリーズで開拓していかなければならないわけで、当面はいかに魅力ある自社コンテンツを提供できるかが重要なテーマになる。同社は近年、OCRに頼らない独自の文字解析システムをもち低価格・高品質の記帳代行サービスを提供するクラウドインボイスを完全子会社化したり、韓国Webcash社との合弁企業であるMiroku Webcash Internationalでアカウントアグリゲーションサービスに進出したほか、英国のFinTechベンチャーであるSkwileと資本業務提携するなど、bizskyで提供する自社コンテンツの価値を高めるための布石を打ってきた。また、同社が運営するビジネスパーソン向けのテンプレートサイト「bizocean」は200万人近い会員を獲得しており、その会員情報はそのままリード情報にもなり得る。bizskyの成功は、こうした“仕込み”が会員数増、ひいてはマーケットプレイスの規模拡大にもつながる好循環を生み出すことができるのかどうかにかかっている。